#21 モン族村のニャンコ
ベトナム サパ 2000年2月Sa Pa,Vietnam / Feb.2000
ベトナムの北部山岳地帯にあるサパ周辺には、多くのモン族が暮らしている。一口にモン族といっても細かく種族が分かれているのだが、部外者である観光客には見分けが難しく、着ている衣装で大雑把に判断するくらいしかできない。
サパの町周辺で見かけるのは、黒系の衣装をまとった黒モン族だ。その装いはシックで落ち着いているものの、異国情緒を求めてやってくる外国人観光客の目には、少し物足りなく映ってしまうのはしょうがないことかもしれない。
そんなわがままな観光客たちの注目を受けているのが、サパから少し離れたバク・ハで開催されるサンデーマーケットだ。この周辺には「花モン族」と呼ばれる人々が暮らしており、日曜日の市場では彼らの鮮やかな姿を目にすることができる。
これは決して観光客に向けたマーケットではなく、娯楽の少ない山間部の人々にとっての週一度の楽しみになっている。そしてそれは、部族や集落を超えた交流の場であり、若い男女にとっては、お互いの存在を意識し合う格好の出会いの場にもなっているようだった。
マーケットは山奥にあり、個人で訪れるのは難しいため、ツアーに参加して訪れることにした。
10人ほどの外国人を乗せたツアーのマイクロバスは舗装していない山道をどんどん進んで行った。確かにこれでは、個人で訪れるのが難しいわけだ。
しばらく進むと、前方に屋根にまで人が山なりに乗り込んでいるバスがゆっくり走っていた。横転しないだろうかと心配になるが、それよりも若い男性ばかりなのが気になる。
ガイドに聞くと、サンデーマーケットを訪れる地元の男性たちで、着飾った女性を見に行くのが楽しみなのだとか。こうまでしてでも行きたいマーケット。訪れる前から期待値がどんどん高くなっていく。
*現在のバク・ハのサンデーマーケットは町中で行われていて、当時と場所が違うようです。
マーケットを訪れると、大勢の民族衣装を着た人達がそれぞれ楽しんでいた。花モン族と言われるだけあって、頭飾りなどの色が赤や青など色とりどりでカラフルだった。ただ、冬なので黒い上着を着ていたりして、暖かい季節と比べてしまうと、少し地味な光景になってしまっていた。
サパの山々に広がる段々畑も、緑が美しい時期には幻想的な光景になるらしいが、冬は土色の世界。真冬にこの地域を訪れたのは、少し失敗だったかもしれない。でも、観光客が少ないという点ではよかった。
サパ(Sa Pa)、Vietnam Feb.2000
サンデーマーケットを後にし、ガイドに連れられて訪れたモン族の村で、にゃんこを発見。まだ半年ぐらいの子猫だろうか。ひび割れた土壁の前に並ぶズタ袋の上でこっちを見つめる様子は、なかなか趣のある図になっていた。
よく見ると、ズタ袋には中国語の文字が印刷されていた。これが薬味のように味わいを深めているように感じる。ここは中国との国境がすぐ近いので、中国製の肥料や資材が安価で簡単に手に入るようだ。
それにしてもこのにゃんこたち、顔立ちも目つきも尻尾も尖っていて、野性味を感じる。所変われば猫も変わるといったところだろうか。
まだ外国人観光客が珍しい時代でもあったため、この村では「外国人がきた!」と、村の人々に大歓迎された。それはありがたいことなのだが、ツアーの参加者全員がある現象に驚き、あんぐりと口を開けてしまった。
何に驚いたかといえば、それは子供の数。溢れんばかりの子供たちが、どっと集まってきたのである。
もちろん、大きな集落だったら「子供が多いね」と少し驚く程度だっただろう。しかし、ここは小さな集落。その規模を考えると、尋常ではない数なのだ。
日本の常識だけでなく、同行していた欧米人たちの想像をも超える数で、なかなか理解が追いつかない。「なぜこの集落に、これほど多くの子供がいるんだ……!?」と、ツアー客全員があっけにとられてしまったというわけだ。
とはいえ、多くの子供たちに歓迎されるのは悪い気持ちはしない。驚きが収まると自然と笑顔になっていった。
土壁の家が並び、周囲は水田ばかり。絵に描いたような素朴さ溢れる集落だったけど、これだけ子供が多いと、きっと未来は明るいだろう。先ほど会ったにゃんこたちも多くの子供たちに揉まれながら、賑やかな環境の中で逞しく成長していくのだろう。
#21 モン族村のニャンコ