旅人が歩けばわんにゃんに出会う タイトル
旅人が歩けばわんにゃんに出会う ~ ユーラシア大陸横断編 ~

#18 陽朔のワンコ

中国 陽朔 2000年2月
Yangshuo, China / Feb.2000
広告
ワンコのお出迎えの写真 陽朔(Yangshuo)、China Feb.2000
ワンコのお出迎え

陽朔(Yangshuo)、China Feb.2000

陽朔郊外を自転車でサイクリング中、ある集落の前を通りがかると、ワンコが「いらっしゃい」ってな感じで出迎えてくれた。

胸には簡素ながらリボンのようなものを付けていて可愛らしい。お世辞にも高級な首輪とは言えないけれど、ちゃんとかわいがってもらっている感じがして、なんだか心がほのぼのとしてしまう。

このワンコは私のすぐそばまでやって来て、愛想を振りまき、とても人懐っこかった。

精悍(せいかん)な感じの犬の写真 陽朔(Yangshuo)、China Feb.2000
精悍(せいかん)な感じの犬

同じ集落にはもう一匹ワンコがいて、遠目に私を眺めていた。人見知りをするタイプなのだろう。こっちはすっきりとした短毛で、精悍な印象を受ける。

随分と昔の話だが、「中国では体毛のない犬は食用にされる」などという話を、自称中国通な旅行者から聞いたことがあった。

その時、もっともらしい口調で言うものだから、ずっとそのことが頭に残っていて、こっちの犬はリボンを付けてもらっていないし、中国では犬食文化が残っているしと、この時は本気でこのワンコの行末を心配してしまった。でもまあそれは旅人の間での都市伝説というやつなのかもしれない。

このワンコの行末がどうなったかは知る由もないが、後に中国では犬食文化が縮小し、2010年代半ば頃からは空前のペットブームが訪れている。今もし同じような場面に遭遇しても、そんな不吉な心配をすることなく、「可愛いワンコがいる」となるに違いない。

漓江の川下りの写真
漓江の川下り

さて、この愛らしい犬たちと出会ったのは、陽朔という広西チワン族自治区にある小さな町なのだが、陽朔と聞いても、「それどこにあるの?」と、ピンとこない人が多いと思う。

これが桂林だと、「あの川下りの……」とか、「タケノコのような岩山がたくさんある……」と、その名を知る人が多くなるはず。

桂林での観光の目玉は漓江の川下り。漓江沿いには奇岩が多く、川下りの船に乗りながら風光明媚な地形を楽しむことができ、観光客に人気となっている。

漓江と陽朔の写真
漓江と陽朔

その川下りの終点となっているのが、陽朔。その付近にも奇岩が多く、とりわけ町の周囲を岩山が囲んでいる様子は圧巻で、中国ならではの異国情緒に溢れており、とにかく素晴らしいの一言に尽きる。

今では陽朔も人気の観光地になっているみたいだが、私が訪れた2000年ころは、一般の観光客は川下り後にちょっと滞在するだけで、そこまで人気のある観光地ではなかった。

でも、滞在している外国人のバックパッカーは多く、特に西欧人のたまり場となっていた。その理由は、この町がとても居心地がいいから。

英語が通じにくく、外国人に冷たい中国にあって、ここ陽朔では比較的英語が通じるし、桂林よりも物価が安く、周囲の風景も美しい。おまけに田舎町なので静かで落ち着けるし、人々は比較的友好的……と、まさにいいことずくめで、彼らが他の町へ移動したくなくなるのも、実際に中国を旅するとよくわかる。

陽朔近郊の集落の写真
陽朔近郊の集落

陽朔の郊外にも、素朴な感じの村や風光明媚な景観が多い。せっかくなので町で自転車を借りて、のんびりとサイクリングをしてみることにした。その時に出会ったのが、冒頭で紹介したワンコたちだ。

この付近の村の建物は、石や日干し煉瓦を積み上げて造られた素朴なもの。町の周囲にはタケノコのような岩山がボコボコとあり、私の頭の中にある「ザ・中国」といった世界観そのもの。自転車を走らせていても、とても心地よく、ペダルが軽く感じられた。

そして頭の中に浮かんできたのが、鳥山明氏の代表作、ドラゴンボール。ドラゴンボールで描かれていたのがまさにこういった風景だった。子供の頃にテレビを見ながらワクワクしていた気分がよみがえってきて、既にワクワクしている気持ちにブースとがかかっていく。

陽朔 月亮山の写真
月亮山

そんなことを思っていると、なんと、ドラゴンボールの主人公・孫悟空が修行でカメハメ波を打ち、大穴が開いてしまったという月亮山を発見。

——というのは、もちろん冗談だが、そうやってアニメのセカイと重ね合わせてみると、見慣れぬ異国の風景にもぐっと親しみが湧いてくるから不思議だ。陽朔滞在を存分に楽しめたのは、鳥山先生のおかげかもしれない。

旅人が歩けばわんにゃんに出会う
#18 陽朔のワンコ
広告
広告
広告