* 奥沢駅前の広場について *

小さいながらも噴水のある広場です。
高度成長期、それは高性能、効率化を合言葉に行われていきました。電化製品、車、建物などはいかに高性能であるかを強調し、無駄なものは非効率で前時代的と排除されました。
都市の再開発においても、駅や駅前の一等地は土地の無駄のないよう最大限建物を建てていきました。
世田谷区内を走る鉄道は東急、小田急、京王とすべて私鉄。営利主義の私鉄沿線といったことを考えれば仕方ないことですが、区内の駅前の多くは窮屈で息の詰まるような景観となっていきました。
その結果というか、家やマンションを買うにも土地が高いし、買えても狭い土地だし、都会のごちゃごちゃしたところに住むよりも、少し郊外の方がいいんじゃない。
空間の開放感があるし、土地も安いし、空気もいいし、少々の通勤時間が長くなるけど我慢しようかな・・・とマイホーム族はどんどんと郊外へ移住していきました。
もの凄く大袈裟に言うなら、そんな流れに待ったをかけたのが世田谷区ではこの奥沢駅という感じになるのでしょうか。
近年では鉄道会社の独断の商業主義の開発ではなく、自治体と企業、そして住民の話し合いにより、再開発が進められるようになりました。住民が要求する「バリアフリーは?」「歩きやすさは?」「緑の景観は?」といったことを自治体や企業が無視できない世の中になったといってもいいでしょう。
それと同時に企業としても魅力的な空間を作ることで、人が集まり、テナントなどの価格が上がり、また企業アピールにもなるといったように様々な部分で経済的に付加価値があるとわかってきたので、魅力ある景観に力を入れるようになってきました。

木も植えられていて、小さな憩いの場となっています。
実際に奥沢駅前のふんすい広場を訪れてみると、そんなに大きな広場ではなく、これが・・・といった感じでした。近年では大きな駅前広場が増えているので、そういう意味ではちょっと期待はずれでした。
やはり当時としてはこれが限界だったのでしょうか。でも小さいながらにも噴水があり、ちょっと今時のコジャレた感じの憩いの場所になっているのは確かで、夕方訪れると多く設置されているベンチではくつろいでいる人が多くいました。
駅前ということで人通りも多く、普通の公園よりも人間を観察をするのが好きな人にはいい公園かもしれません。

広場に面した建物もおしゃれな外観になっています。
この項目も勝手に深く考えていくと、やはりこれも羽根木神社の参道と同じで、法的にどうにもならない住民の町つくりの提言を行政側が意図的にふくらませた百景でもあるような気もします。
この場合は駅前に広場を設置しなければならない義務や法律といったものはなく、鉄道会社にしてみれば土地の無駄という事になるけど、そういったスペースがあれば住民にとってはうれしいし、その心意気はこういった百景などで具体的に評価されますよといったところでしょうか。
区民の選ぶ百景に、こういった企業の努力によって生まれたさりげない広場が評価され、選ばれたことは、とても意義のあることかなと思えます。

藁で作った大蛇が奥沢の町を練り歩き、最後奥沢神社に帰っていきます。
奥沢駅周辺は踏切が多く、比較的車が少ないです。
目黒通りと環八の間にある土地なので、奥沢駅前の自由通りが直線的に抜け道として近いのですが、この通りは東横線、大井町線、目黒線と三つの踏切を通過しなければなりません。これが結構大変で、タイミングが悪いとかなり時間がかかります。
奥沢駅周辺は踏切で不便もするけど、踏切が多いことで抜け道に使う人が少なく、いい環境が守られているともいえる不思議な場所です。
この奥沢駅前が活気付くのは奥沢神社の例大祭の時です。奥沢神社がせたがや百景に選ばれていない事が不思議でしょうがないのですが、奥沢神社には大蛇のお練りという変わった風習があります。
大祭期間の土曜日に藁で作られた大蛇が奥沢の町を練り歩き、そして日曜日にはこの奥沢駅前から各町会神輿が奥沢神社に向かって連合で渡御していきます。その時にこの駅前広場の前を通って行くので、普段は静かで落ち着いた雰囲気の広場が大いに賑わいます。