世田谷散策記 ~せたがや百景~

せたがや百景 No.98-1

九品仏の参道

せたがや地域風景資産 No.2-12

九品仏浄真寺脇のクロマツの並木

九品仏浄真寺といわれるのは、阿弥陀仏如来像を三体ずつ三つのお堂に納めた三仏堂からきている。三年ごとの「お面かぶり」は都の郷土芸能に区内唯一指定されている。長い参道の向こうに見える茅造り総門、常盤伝説に由来するさぎ草園など見所が多い。奥沢城址に建てられた寺で寺域に土塁が残っている。(せたがや百景公式紹介文の引用)

・場所 :奥沢7-41-3
・関連団体:松並木風景を観察する会
・備考 :九品仏浄真寺の歴史や境内、お面かぶりについてはNo.98-2で紹介しています。

***  このページの内容  ***

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* 九品仏の参道 *

九品仏浄真寺参道の写真
九品仏浄真寺の参道

木々が多く植えられているので、緑のトンネルとなっています。

世田谷には大田区の本門寺や杉並区の妙法寺のようないかにも総本山といった大きなお寺はありませんが、招き猫の豪徳寺に九品仏の浄真寺という個性的で有名なお寺が2つあり、どちらもせたがや百景に選定されています。

九品仏浄真寺は大井町線に九品仏駅があるほど有名なお寺なのですが、「九品仏」って正しく読む事ができますか。東急沿線の人や仏教関係者は当たり前に読めると思いますが、読み方は「くほんぶつ」になります。

九品仏って何?そういった仏像があるの?それとも専門用語?と、ちょっと変わった名称に早速興味がわいた人もいるかもしれませんが、簡単に書くなら愛称で、九体の品を結んだ大仏があるから親しみを込めて九品仏と呼ばれるようになりました。

正式な寺の名称は九品山唯山念仏院浄真寺となりますが、現在では九品仏浄真寺という言い方が広く一般的です。

九品仏浄真寺参道 春の参道入り口の写真
春の参道入り口

参道が華やかに感じられる季節です。桜の木の下は交番です。

世田谷区内の神社やお寺の参道は耕地整理や大通りの建設などで消滅したり、中途半端に残っているものが多いです。

状態よく残っているのは喜多見の慶元寺や氷川神社、その他で次第点なのは豪徳寺ぐらいでしょうか。逆に吉良氏の菩提寺となっている勝光院などは参道が住宅地になってしまった良い例かもしれません。

九品仏の参道は九品仏駅のすぐ北側、ちょうど角に交番ある上野毛通りの交差点から参道が始まります。交番自体が控えめに造られていて、とりわけ桜の時期は花が交番を覆い隠すように咲くので素晴らしいです(深い意味はありません・・・)。

九品仏浄真寺参道 新緑の季節の参道の写真
新緑の季節の参道

この時期は歩くとすがすがしさを感じます。

参道は都市開発にも負けずきれいな状態・・・、というか、きれいすぎる状態で残っています。

地面はきれいにタイルが敷かれていて、植え込みも小さな石垣で囲ってあります。どちらかというと参道という雰囲気ではなく、都会的な公園といった雰囲気で、道の脇にテーブルを並べたらお洒落なオープンカフェのできあがりといった感じです。

参道の横は入り口の交番を始め、区の出張所、地区会館や九品仏広場(公園)と公的な場所となっているので、参道全体が公園のような雰囲気で整備されたようです。

統一感のある雰囲気の良さや、手入れが行き届いている事から平成元年にせたがや界隈賞も受賞しています。

九品仏浄真寺参道 「禁銃猟 警視庁」の石碑の写真
「禁銃猟 警視庁」の石碑

参道の入り口付近の目立つ場所に建てられています。

参道を進んですぐ、ちょうど交番の横付近に「え~~~!」というような、「禁銃猟 警視庁」と三面に書かれた石柱が建てられています。

これは読んでその如く、「ここで銃を使って猟をする事を禁止する。警視庁より。」という事です。

よくお寺の前に酒を飲んだ人、なまぐさい人間は、山門に入ってはならないといった意味の漢詩「不許葷酒入山門」という石碑がありますが、さすがにこれは・・・。

今の時代に鉄砲の弾が飛んでくる事はない・・・とも言い切れない世の中ですが、ちょっと不安になって周囲を見回してしまうようなインパクトがあります。

九品仏浄真寺参道 駒八通り沿いの石碑の写真
駒八通り沿いの石碑

墓地の裏側、花に囲まれるように石碑があります。

この石柱は3カ所に立てられています。残りは境内の中(恐らく境内の外から移動したもの)と駒八通り沿いにあります。なかなかの念の入れようで、警視庁も本気だったようです。

一体こんな危険な状態だったのはいつの事なのでしょう。背面には建てられた年が書かれていて、明治32年(1899年)とあります。

当時のこの地域一帯はほとんど人が住んでおらず、雑木林ばかりの土地でした。狩猟もやりやすかった時代です。この石柱はそういった古い時代の名残となるようです。

大正時代になると、南では田園調布の宅地開発が進み、西の等々力ではゴルフ場が造成され、北の駒沢でもゴルフ場ができるなど少しずつこの地域の開発が進んでいき、大正12年の関東大震災後からはこの地域に限らず世田谷がどんどん切り開かれ、爆発的に人口が増えていくこととなります。

ちなみに世田谷で変わった門前の石碑といえば、烏山の寺町にある称往院極楽寺の「不許蕎麦入境内」の碑が有名です。この寺には蕎麦打ち名人の住職がいて、蕎麦屋の屋号に「庵(あん)」という字が付けられるきっかけとなったという逸話が残っています。

九品仏浄真寺参道 参道の石碑群の写真
参道の石碑群

庚申塔やお地蔵さまが並んでいました。

参道の途中には庚申塔などの石碑が置かれているのも参道らしさを失わせない工夫でしょうか。参道の中程には九品仏広場という公園があり、参道と調和した雰囲気のいい子供達の遊び場となっているのも良いですね。

ちなみに江戸時代後期頃に浄真寺は最盛期だったようで、多くの参拝客で賑わい、門前や参道脇に何軒かのお店が並んでいたようです。ちゃんとした門前町を形成するというまでいかないのが世田谷のお寺らしいところでしょうか。

九品仏浄真寺参道 秋の参道の写真
秋の参道

柔らかい感じがして穏やかな気分になれます。

参道は入り口のソメイヨシノと里桜、参道内の樹木の新緑時のすがすがしさ、秋の紅葉ときちんと季節を感じる事ができます。

浄真寺境内も都の天然記念物に指定されているイチョウやら鷺草のある池があったりと季節を感じられますが、参道から季節の情緒を感じられるとお寺に入る時のワクワク感が増すというものです。

それにこういった雰囲気のいい参道は付近の住民にとっていい散歩道になるだけではなく、日々の通勤通学で通るだけでもうれしいものです。

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* クロマツの並木 *

九品仏浄真寺参道 黒松の並木の写真
黒松の並木道

道の真ん中から松が生えているといった感じです。

参道の終点に総門があります。この門の前を左に進むとせたがや地域風景資産に登場する黒松の並木道が続いているのですが・・・、これは並木道というより、黒松が生えている道というべきなのでしょうか。なんとも中途半端な状態で、道の真ん中が並木となっています。

この黒松の並木は、場所的にもかつて九品仏の境内の周りに植えられていた屋敷林の名残なのかなと思っていたのですが、古い地図を見ると浄真寺の塀と松の間が小道となっていて、その道沿いに植えられていた並木だったような感じです(詳細不明)。

参道にも同じような立派な黒松が多いので、この付近の道に意図的に植えられていたのかもしれません。

九品仏浄真寺参道 黒松などが生えている様子の写真
黒松などが生えている様子

立派な大木が道からそびえています。

街道とかに黒松の並木がある風景というのはよく時代劇に出てきます。古き時代の日本の定番といった感じでしょうか。実際、そういった風景から六本木とか、八本松とかの地名が生まれていたりします。

そういった古くからの景観が残されている事は評価できますが、これでは情緒が感じられないような・・・。残すなら道から木が生えているような状態ではなく、もっと違う方法はなかったのかな・・・といったような微妙な感想となるでしょうか。

* 新春もちつき大会など *

九品仏浄真寺参道 正月の総門の写真
正月の総門

行事のある時には紋幕が取り付けられます。

九品仏の参道が賑わうのは・・・、改めて書くまでもないのですが、浄真寺の参道なので浄真寺に参拝する人が多い日です。

新年の初詣、3年に一度行われるお面かぶりの日、あとは紅葉時分にも多くの人が訪れ、参道を多くの人が行き交い、ちょっと賑やかに感じられます。

それに行事のある時には参道の正面の総門に紋幕が掛けられ、正装スタイルとなるのも特別な日といった感じでいいです。こういう日はやっぱり訪れる方もお寺に入るのにちょっと気合が入るものです。

九品仏浄真寺参道 餅つき大会の様子の写真
餅つき大会の様子

優しそうな地域の人たちに見守られながら餅つきを楽しんでいました。

広々とした参道を利用して地元の自治会によってイベントも行われています。

新年明けた1月の第三土曜日には青少年九品仏地区委員会主催で新春餅つき大会が行われます。2018年で30回目と昭和から続いている行事です。

餅つき大会なので餅つきが行われるのですが、本格的に竈に薪をくべ、もち米を蒸し、臼と杵で餅につきあげます。つきあがった餅はすぐに丸めて、その場で販売されます。

子供たちにとっては餅つきや餅を丸める貴重な機会となっていて、多くの子供が餅つきを楽しんでいました。

九品仏浄真寺参道 餅つき大会の時の参道の写真
餅つき大会の時の参道

出店などが並び、多くの人で賑わっていました。

このイベントは餅つきだけではなく、地域の団体の出店やフリーマーケットが参道に並び、子供用のゲームコーナー、また演奏などのステージも行われます。

お餅だけではなく、焼きそばやトン汁などの食べ物も安い値段で販売されているので、ふらっと立ち寄る近所の人も多く、小さいイベントなのに参道に多くの人が集まり、とてもにぎやかな感じとなります。おそらくこの日が一年で一番参道が賑やかな感じとなるのではないでしょうか。

九品仏浄真寺参道 九品仏神酒所の写真
九品仏神酒所

参道の横に神酒所が設置されます。

秋には奥沢神社でこの地域の祭礼が行われます。参道の脇にここ九品仏地域の神酒所が設けられ、神輿や太鼓が地域を練り歩きます。ここの神輿を担ぐ団体は鷺草伝説にちなんで鷺睦と名付けられているのがちょっといい感じです。

また奥沢神社の祭りを有名にしている大蛇のお練りも土曜日に参道の入り口の交差点までやってきます。もしこの雰囲気のいい参道を歩いてくれれば絵的にいい感じになるかもしれませんね。

* 感想など *

九品仏浄真寺参道 総門から見た参道の写真
総門から見た参道

秋の紅葉の季節は参道、浄真寺境内ともにお勧めです。

浄真寺の参道はこじゃれた雰囲気で、しかも緑が多く、季節感を感じられる素晴らしい参道です。

あまり考えたことがないかもしれませんが、参道は境内の一部として寺社の所有地や私道となっている場合と、普通の道、いわゆる公道となっている場合とあります。

なかなか難しい問題で、道だけが私道でも道沿いも所有地でないと、参道の環境は維持できません。マンションなどが建ち並んでしまったら景観云々の問題ではなくなってしまいます。

ここ浄真寺の参道は行政とともに参道が持つ緑の環境と町並みをうまく調和させ、憩いの場として利用しているのが特徴で、こういった参道の活用方法もあるんだなと感心してしまいました。

ー 風の旅人 ー

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* 地図、アクセス *

・住所奥沢7-41-3
・アクセス最寄り駅は大井町線九品仏駅。
・関連リンク九品仏浄真寺(Facebookサイト)

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<せたがや百景 No.98-1 九品仏の参道 2009年12月初稿 - 2018年8月改訂>
( せたがや地域風景資産 2-12、九品仏浄真寺脇(南側)のクロマツの並木 )