野川と小田急ロマンスカー
野川の世田谷通り付近から上野田橋辺り崖線を抜けた小田急線はまず野川を渡る川辺の緑と一瞬のコントラストを作り走り抜けるロマンスカーは私鉄沿線ならではの風物詩。(せたがや百景公式紹介文の引用)*現在は見えません。
1、野川と小田急ロマンスカーについて

百景が選定された昭和59年と現在を比べ、世田谷区で一番何が変わったと考えれば、部分的には用賀や三軒茶屋、二子玉川の超高層ビルを絡めた再開発が頭をよぎりますが、全体的に見れば小田急線の高架化ではないでしょうか。
田園都市線ほど大規模な駅前再開発は行われていないにしても、駅前の風景が変わり、開かずの踏み切りもなくなり、沿線の姿は一変しました。

時間帯によっては多くの人が踏切を待っていました。
下北沢周辺の世田谷代田~東北沢の間は、近年まで幾つか踏切が残っていましたが、それも平成25年に下北沢駅周辺の再開発と共に線路の地下化が行われ、現在では区内の小田急線の踏切は全てなくなりました。
運行本数の多い田園都市線と小田急線が地下化や高架化で踏切がなくなったので、後は京王線です。多くの開かずの踏切を抱えているので、京王線が高架化されれば、沿線の利便性が上がり、道路や町並みもすっきりとするはずです。
京王線の高架化は、昭和の時代から計画があり、議論され続けてきましたが、なかなか話が進みませんでした。2013年になってようやく工事が開始され、現在、笹塚から仙川までの高架化の工事が進められていますが、完成時期は未定となっています。いちおう2030年に開通するのでは・・・と言われていますが、どうなるでしょう。

*国土地理院地図を書き込んで使用

*国土地理院地図を書き込んで使用
さて、この「野川とロマンスカー」という項目なのですが、昭和の時代、野川の川辺を散歩していると、小田急線の電車が野川を渡っていく様子がよく見えたそうです。
特に目立つ赤いロマンスカーが野川を渡っていく様子は、「あっ、ロマンスカーが走っている!」と、とても印象的だったようです。

*せたがや百景の冊子 世田谷区企画部都市デザイン室制作から引用

一番手前の高い高架橋は車両基地への引き込み線です。
しかしながら、1994年の喜多見電車基地の設置や、1997年の喜多見駅高架化によって、線路の設置状態が変わってしまい、今では列車が全く見えなくなってしまいました。
選定当時は、世田谷通り付近からの眺めがよかったようです。橋を渡る様子もですが、喜多見不動前の崖線を走る様子もよく見えていたようです。
しかし、現在では世田谷通りから野川を渡る小田急線を見ようとすると、高架橋の柵が高くなっているのもありますが、車両基地への引き込み線が一番手前にあり、それが邪魔をしていて本線が見えないのです。

美しい遊歩道と桜並木が続きます。
反対側ならどうだろう、もしかしたら・・・と、線路の北側に回ってみると、こちら側は野川緑道としてきれいに川沿いが整備され、遊歩道沿いには桜が植えられていました。川には鯉や鮒が泳いでいて、川辺に降りての散歩も良さそうでした。
肝心の小田急線は、やはり手前に引き込み線が高い位置にあり、車両がほとんど見えない状態でした。これでは赤いロマンスカーが通っても分かりません。完全に過去の風景となっていました。

選定当時はなかったものです。

車両基地の上にある公園で、入場時間が決まっています。また園内は禁煙です。
川沿いにある喜多見車両基地は、小田急線の高架化でこれまで経堂にあった車両基地が使えなくなるので、1994年に新たに造られました。
もともとこの場所は野川に面した低地地帯で、田畑が広がっていました。後に野川の大規模な治水工事が行われ、流路が真っすぐにされ、低地部分にはテニスコートなどの運動施設が造られました。その土地を利用したというわけです。
この車両基地の面白いところは、屋上部分の一部が「きたみふれあい広場」という区立公園になっていることです。車両基地の上が行政管理の比較的大きな公園になっているというのは珍しいことではないでしょうか。
もしかしたらこの車両基地の上の公園からなら列車が見えるのではと期待して訪れたものの、ここからではちょっと遠いし、木も邪魔してうまく見えませんでした。やはりこの項目は過去の風景となってしまったようです。

小田急線の高架のすぐ横にあります。冬至の星供養が有名です。

複々線と引き込み線で六本の線路が横切っています。
昔の様子を写真で見ると、ロマンスカーが野川を渡る背景には、喜多見不動を含めた崖線の緑、野川の川辺の緑があり、ロマンスカーの赤い車体がよく映えていました。
その喜多見不動に参拝してみると、境内のすぐ横を小田急線が走っていました。ここからなら小田急線をそれなりによく見ることはできますが、特に趣きのある様子ではなく、単に野川の上を走っているといった感じです。
それにしても、複々線化された本線と、車両基地への引き込み線と、この野川の上は線路だらけです。複々線化される以前は、線路の幅も狭く、本当によく見えたことでしょう。

(*イラスト:ユウジさん 【イラストAC】)
ロマンスカーといえば赤だよな。前面に展望席があって・・・。そういえば、最近見かけないような・・・。というより、まだ赤いロマンスカーって走っているのだろうか?
ちょっと疑問に感じ、小田急線のHPで調べてみると、今でも赤い車両は走っていましたが、昔のものとはデザインや印象が違い、なんだかのっぺりとしているような・・・。それに今では赤だけではなく、青や白の車体もあるようです。
小田急線や鉄道に限らず、昔は今で言うなら野暮ったくパーツが付いていると、性能がよくてカッコよかった印象がありますが、最近はすっきりとしたデザインが多いですね。これも時代の流れなのでしょうね。
時代の流れといえば、ロマンスカーというネーミングセンスも凄いですね。いかにも昭和的な和製英語というか、ハイカラ英語といった感じです。昭和の時代はハイカラなイメージでも、令和の世の中だと色んな意味で「微妙」といったところでしょうか。
ちなみに、小田急線海老名駅の横にロマンスカー・ミュージアム(要、入場料)があり、選定当時の車両を含め、昔の3車両が展示してあります。
また、小田原の北の方にある開成駅近くの公園でも展示保存されています(無料)。また小田急のホームページでもバーチャル鉄道博物館として歴代の車両を展示してあります。
2、感想など

低い位置を列車が走っていたら絵になりそうです。
鉄道が川を渡る風景、特にシンプルな鉄橋を渡っていく様子は美しく、鉄道写真では人気の構図となっています。かつて野川を赤い列車が渡っていく様子は百景に選ばれるだけあって、とても絵になっていたようです。
残念ながら、今ではそういった様子は過去のこととなってしまいました。もし、今でも昔と同じ位置に橋がかかっていたならどうでしょう。野川の桜と合わせた様子が絵になり、関東でも有名な鉄道写真スポットになっていたように思います。そして、多くの鉄道写真家が三脚を並べている様子が野川の春の風物詩になっていたかもしれませんね。
せたがや百景 No.58野川と小田急ロマンスカー 2025年2月改訂 - 風の旅人
・地図・アクセス等
・住所 | 喜多見8丁目-24-3(上野田橋) |
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・アクセス | 最寄り駅は小田急線喜多見駅。 |
・関連リンク | 小田急電鉄、ロマンスカー・ミュージアム |
・備考 | 現在では高架化され見えません。 |