世田谷散策記 タイトル
せたがや百景 No.46

給田小学校の民俗館

せたがや地域風景資産 #3-18

給田小学校の古民家

給田4-24-1

給田小学校の一角にワラ葺のままの農家が保存されている。農具などの農村生活に深い関りがあった道具類も併せて保存され、小さな民俗館となっている。農村だったころを思い出させる。児童にとって得がたい郷土教育の教材でもある。(せたがや百景公式紹介文の引用)

広告

1、給田小学校の民俗館について

1990年頃の給田小学校の航空写真(国土地理院)
1990年頃の給田小学校

国土地理院地図を書き込んで使用

改築前の給田小学校には、地域にあった宍戸家のワラ葺古民家を移築した古風な民俗館と、それに付随する形で昔の農機具を展示した資料館がありました。頼めば一般の人も見学も可能だったそうです。

平成17年からの給田小学校の建て替えに伴って、古民家は解体されました。どうするのだろう。次大夫堀公園民家園にでも移築するのだろうか。それとも、このまま消滅してしまうのだろうか。と、この項目だけ未訪問だったので、気になっていたのですが、新校舎が完成した後、再び復元され、学校に残されました。落成式は平成22年1月30日でした。

給田小学校の校門
給田小学校の校門

校門のすぐそばに古民家(民俗館)があります。

そのすぐ後に訪れてみたのですが、日曜日の夕方だったので完全に人気がなく、普段はどういう状態になっているのか分かりませんが、一般の人が見学し難そうな感じでした。

でもまあ、校門のすぐそばに設置されているので、内部に興味がなく、ただ単に見たいだけの人には見やすいようになっています。それにしても・・・、復元された民俗館って遠目から見ると、よく言えば古民家風建物。悪く言えば、プラスティックでできたおもちゃの家みたいな感じでした。

以前のものは写真でしか見たことがないので、評価のしようがないのですが、立地条件を含めてあまりにも昔の写真と違いすぎて、何とも感想に困ってしまいます。

小学校の校庭にあるので、安全、防火という意味で、ワラ葺屋根をトタンで覆ったりするような安全対策が施されるのは、しょうがないといえばしょうがないのでしょうか。

給田小学校の民俗館
校門から見る民俗館など

奥は古農具などが展示された資料館になるようです。

その後、2014年に選定された第三回せたがや地域風景資産にも選ばれました。普段から公開したりするような活動を行っているのかな。行ってみなければ。

と、最初は思ったものの、選定の趣旨などを読むと、「宍戸家より給田小学校に移築・保存され古民家は、せたがや百景にもなっている。日常的な児童の憩いの場であると共に、千歳民俗資料保存会と児童による掃除や障子の張り替え、PTA や地域の団体による行事など、学校、地域、子ども、保護者の協働による「生きた風景」となっている。小学校の敷地内にあることから、セキュリティ上、地域風景資産としての公開性に一定の制限がつくことはやむをえない。海外では景観をテーマとした環境教育、児童教育が盛んである。古民家を通して、子どもたちに昔の建築物や地域活動に興味を持ってもらうなど、環境教育の場として一層活動を広げていくことが期待される。」とありました。う~ん、どうなのでしょう。

勝手な想像で書くのもなんなのですが、世田谷には農大の農具を展示した博物館に次大夫堀公園民家園、北烏山九丁目屋敷林市民緑地など本物の古民家や道具、生きた景観があります。むしろそこを訪れる方がいいのではと思ってしまいます。

岡本民家園 囲炉裏の写真
岡本民家園の囲炉裏

部屋の中で火を使うので、室内が煙たくなります。

近年では本物を知らないで育ってしまう子供達が多く、社会に出てから色々と困ることも多々あるようです。例えば古民家園では囲炉裏で煙を出して、茅葺き屋根に虫が付かないようにしています。だから煙ったく、煤っぽい臭いもあります。それが本物の古民家です。

農機具も実際に畑で使わなければ、ただの置物でしかありません。私自身、小学校時代に千歯扱きや発展形の足踏み式脱穀機を使ったことがありますが、そのころは力がなかったのでなかなか脱穀ができなく、油断していたら回転式ドラムに巻き込まれて痛い経験をしたことがあります。生きた痛い経験です。

次大夫堀公園で田植えをする子供たちの写真
次大夫堀公園で田植えをする子供たち

雨も降り、泥まみれになっていました。

そう考えると、実際に次大夫堀公園で田植えをしている子供たちの方が生きた体験をしているのではないでしょうか。

海外では景観をテーマとした環境教育、児童教育が盛んであるとありますが、それは調和した景観、いわゆる単体ではなく、複合的な景観ではないのでしょうか。

単に校庭に置かれている、しかも現代風にアレンジされた古民家で景観を云々というのはちょっと趣旨が違うような・・・とまず感じてしまったのですが、実際に活用しているところを見たわけではないので、単なる私の想像です。

2、感想など

民俗館の扁額

古民家で暮らしたことがありますか。古民家は意外と夏は涼しく、そして冬はビックリするほど寒いです。そして隙間が多いので、虫も多いです・・・。

日本だけではなく、東南アジアの伝統的な古民家などでも、風通しがいいことを一番に考えられています。昔は冷房がなかったので、気密性を高めると、梅雨や夏が地獄になります。世界中どこでも衣食住というのは生活の知恵から改良されてきました。

現在風にアレンジされた古民家は古民家なのでしょうか。日本風にアレンジされたタイ料理はタイ料理なのでしょうか。とまあ、この手の議論はその人の考え方やこだわりで論点がずれてしまうことが多々あります。

一番大事なのは、風景というよりも、いかに活用されているかだと思います。子供たちが大きくなった時、自分たちの小学校には古民家があって・・・ということが、何かの役に立ったり、考えの幅を広げるきっかけになればいいですね。

せたがや百景 No.46
給田小学校の民俗館
せたがや地域風景資産 #3-18
給田小学校の古民家
2025年2月改訂 - 風の旅人
広告

・地図・アクセス等

・住所給田4丁目24−1
・アクセス最寄り駅は京王線千歳烏山駅。駅から少し離れています。
・関連リンク給田小学校
・備考内部の見学はできない模様
広告
広告
広告