世田谷散策記 ~せたがや百景~

せたがや百景 No.17

梅と桜の羽根木公園

梅ヶ丘駅北口の小高い丘が区立公園になっている。以前は六郎治山とか根津山と呼ばれていた。梅林には梅の木が約650本植えられ、2月下旬紅梅白梅の咲きそろうころには多くの人々が訪れる。また春には桜の名所でもある。子ども達自身が遊びを工夫し、自由気ままに遊べるプレーパークも設けられている。(せたがや百景公式紹介文の引用)

・場所 :代田4-38
・備考 :毎年2月~3月頃の梅の開花時期にはせたがや梅まつりが行われます。

***  このページの内容  ***

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* 羽根木公園の概要 *

羽根木公園の梅林側の入り口
羽根木公園の梅林側の入り口

駅に近い南西の入り口です。

梅が丘駅の北側の丘にせたがや梅祭りで知られている世田谷区立の羽根木公園があります。

羽根木公園は広い梅林をはじめ、木々に囲まれたプレイパークや子供の遊び場、更には野球グラウンドにテニスコート、プールといったスポーツ施設がある大きな総合公園です。

この羽根木公園のある丘は、かつて六郎次という鍛冶屋が住んでいたので六郎次山と呼ばれていたり、大正末期には東武鉄道の根津財閥の所有地になっていたことから、根津山と呼ばれていたようです。

戦後になって都の所有となり、この場所が羽根木村の飛び地だったために羽根木公園と名づけられました。

羽根木公園 売店やトイレ付近
売店やトイレ付近

一応この付近がメインストリートになります。

戦後になると、都から世田谷区に移管され、地域の特長を生かした公園に整備されていきます。

その後、飛地整理や新住居表示が行われ、この公園付近は代田町や松原町に組み込まれ、住所的には代田となりました。

元々羽根木の本村とは離れていたのですが、羽根木と名が付いていながら現在の羽根木町から少し離れている理由です。

羽根木公園 野球場のバックネット裏
野球場のバックネット裏

ここでは将棋をしているお年寄りの姿をよく見かけます。

また、この丘には根津山遺跡、六郎冶山遺跡、梅ヶ丘横穴といった縄文時代やら古墳時代の遺跡もあるようです。

一応現時点で世田谷区内で一番古い文化遺跡は根津山遺跡の住居跡となり、これは縄文文化以前の無土器文化といった定義になるそうですが、園内に案内板とかなかったので実際にどこにあるのかはよく分かりませんでした。

羽根木公園 迷路の遊び場
迷路の遊び場

なかなか楽しそうな遊び場です。

羽根木公園内には子供の遊び場が豊富にあります。中でも面白いなと思ったのが、迷路のような遊具施設のある迷路の遊び場です。

山あり谷ありの立体感のある遊び場でとても子供が楽しそうに遊んでいました。ただ転落等があってはいけないので下の方で温かく見守っているお父さんお母さんの姿を多く目にします。

この他にも遊具施設のある児童遊園、草広場といったくつろげる広場もあり、都会にあって木々も多いので子供を遊ばせるにはなかなかいい公園です。

羽根木公園 プレイパークの入り口
プレイパークの入り口

森の中の遊び場といった感じです。

遊び場で特徴的なのは百景の文章にもあるプレーパークです。プレーパークはプレーリーダーという常駐する管理人がいて、子供が自己責任で自由に遊べる場所です。

様々な遊びを体験することができる遊び場ですが、少々の怪我なら構わないという親の心構えがないと遊ばせられない遊び場といった感じでしょうか。

地域風景資産に「羽根木公園にある羽根木プレーパーク (風景2-2)」という項目があり、そちらで開園の経緯など詳しく紹介しています。

羽根木公園 野球場付近の桜並木
野球場付近の桜並木

歩いているお年寄りの姿が多いです。

梅とともに百景のタイトルになっている桜ですが、梅のようにまとまって生えているわけではなく、公園内の並木道といった感じで並んでいて、どちらかというと散歩しながら手軽に花見をといった地元の人にお勧めの桜スポットになるようです。

ただ桜の木自体は砧公園の桜に負けないぐらいの大木も多くあり、世田谷区の名木百選にも選ばれています。開園当時に植えられたものなので梅よりも歴史があるのですが、知名度では梅に負けているのが実際です。

羽根木公園 花見の様子
花見の様子

平日はいいのですが、休日ともなると広場がないのでちょっと窮屈な感じの花見になります。

桜の時期になると桜の木の下で桜を見ながら花見をといったことになるのですが、ここでは桜の花見をできる芝生がないので野球場脇の通路が花見場所となります。

平日のすいている時間帯ならいいのですが、多くの人が道などにシートを敷いてくつろぐといった花見はちょっと窮屈そうな感じでした。

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* 羽根木公園の梅林と梅まつり *

羽根木公園 新緑時の梅林
新緑時の梅林

梅の開花時期以外は普通の木です。気にかけて歩く人はいません。

羽根木公園といえば、やはり百景のタイトルにもあるように梅ということになるでしょう。

梅ヶ丘駅方面の斜面に広がる梅林の広さには訪れてみて驚きました。公園の南側のほとんどが梅林になっています。

現在では百景の選定時よりも手入れが進んでいて、約700本の梅の木が二月の開花時期に花を咲かせてます。その数だけで考えると、23区内で最大級の梅林となるはずです。

羽根木公園 梅の時期の梅林
梅の時期の梅林

梅の花と漂ってくる香りが素敵な道になります。

羽根木公園のすぐ南側は小田急線の梅ヶ丘駅と梅丘町域です。名前からすぐに地名の由来が連想できてしまうのですが、実はひっかけ問題です。

普通に考えるならこの梅林のある丘にちなんで町の名前が付けられ、駅の名前が付けられたと思うものですが、実際は順番がめちゃくちゃなのです。

梅ヶ丘駅が開設したのが昭和9年。町名の梅丘1、2丁目がつくられたのが昭和39年で、梅丘3丁目が昭和43年。

そして羽根木公園の梅林は昭和42年に世田谷区議会に当選した55名が55本の梅の木を植樹したことに始まります。

その後、何周年記念といった記念行事の度に植樹されていき、現在のような立派な梅林になっていったというのが、この梅林と梅丘の町の歩みです。

駅名から住所ができ、それに合わせて梅林ができたというのは・・・、なんとも話のネタには面白い流れです。

羽根木公園 チューリップと梅
チューリップと梅

チューリップは植木市のものです。

ではそもそもの源である駅名はなぜ梅ヶ丘と名付けられたかというと、これには色々な説があって正確にはよく分かっていません。

候補に上がっている説も適当な感じのものばかりで、いい加減に付けてしまった理由を隠しているのだろうかと疑ってしまうぐらいです。

でもまあ東京都内でも名が知れるぐらいの梅祭りを開催できるような地域の特徴ができ、今では結果オーライといった感じでしょうか。

梅祭り時の商店街の出店

週末の昼時はけっこう混雑します。

約700本からなる梅林はなかなか立派なものだと思います。しかも早咲、中咲、遅咲と梅の種類も豊富なので咲き始めてから1ヶ月は何かしらの梅を楽しむことが出来ます。

ただ、桜のような感じの梅爛漫な迫力ある光景を期待するならちょっと期待はずれと感じるかもしれません。

商業用の梅林なら種類が同じなので同時期に開花して辺り一面の梅の花といった感じとなるのですが、あくまでもここは観賞用の梅林なので、訪れるタイミングによってはまだらになってまとまりなく見えたりします。

ということで700本の梅の木があるとはいいながら個別の品種の花をしみじみと観賞するような楽しみ方になるかと思います。

また近年は梅の木自体が元気がなくなり、花が少なくなってしまったとか。そのため梅の木の根を守るために処置が施され、梅林の中の通路以外には入れないようになりました。

今後回復してきれいな花を咲かせる梅林に戻ってほしいものです。

羽根木公園 中村汀女さんの記念碑
梅林にある中村汀女さんの記念碑

女流俳人で、門下生が寄付したものです。

梅林の中には大きな青っぽい石に俳句が刻まれた碑が設置されています。これは女流俳人、中村汀女さんの記念碑で、昭和54年に門下生によって寄贈されたものです。

碑には「外にも出よ ふるるばかりに 春の月」といった句が刻ませています。汀女さんは昭和12年頃からこの近くに住み、昭和22年にこの句を詠んだそうです。

九州出身ですが、世田谷を第二のふるさととして愛した方なのでここに設置されたとか。世田谷文学館には彼女の書斎が再現されているので、興味があれば足を運んでみるといいかと思います。

その他梅林の中に茶室「日月庵」があります。騒々しい公園に茶室というのは不釣り合いな感じですが、梅林の中なので梅の開花時期以外は比較的静かな場所といえます。

梅祭りの時には茶の振る舞いが行われますが、平素は茶会や短歌会などといった用途で使用されているようです。

羽根木公園 梅祭りのイベント会場
梅祭りのイベント会場

地元の団体や警察署などによるイベントが行われます。

梅の開花時期、だいたい2月いっぱいぐらいでせたがや梅祭りが行われます。イベントの多い日曜日の昼頃に訪れてみると、凄まじい人でビックリすることでしょう。

駅からぞろぞろと人の流れがあり、まるで砧公園の桜の時期並みの混雑ぶりでした。日が短く寒い時期なので近くて手軽な目的地といった感じで人気があるのかもしれません。

梅まつりの時期は公園内に近くの町内会の販売ブースが出たり、ステージが設けられます。植木市が同時に開かれているのもここの梅祭りの特徴です。

町会のブースでは手ごろな値段で飲食ができたり、梅関係の食品を購入することができます。イベントは週末を中心に行われ、抹茶や甘酒のサービス、筝曲演奏や舞台の催し物、俳句講習会、モデルの写真撮影会、茶席など日によって色々とやっているようです。

それから日にちが決まっているようなのですが、梅ヶ丘駅前でもちょっとしたイベントや青空フリーマーケットが開かれているようです。

* イベントなど *

* 雑居まつり *

雑居まつり サンバのステージイベント
サンバのステージイベント

紅葉も加わって色とりどりで華やかなステージでした。

梅祭りは都内で広く知られているほどの大きなイベントですが、秋(10月中旬頃)には雑居まつりといったユニークなイベントも行われています。

2013年で第38回目というから結構古くから行われているイベントで、この雑居祭りは「地域の問題は地域住民の手で」をひとつの合言葉に、さまざまな地域の問題をとりあげて活動している団体・個人の自発的参加によって行われます。

雑居まつり 国際的なエリア
国際的なエリア

多様性なところが魅力です。

東京は地方から多くの人が集まってくる大都市であり、近年では多国籍化もしています。

人の出入りが激しい地域なので、イベントとして地域交流の場を作ってお互いをよく知ろうといった事から始まったのですが、現在では様々な異文化を感じるような出店が並び、国際文化交流の場にもなっている感じです。

色んな価値観や文化を持つ人が同じ地域に暮らす事で一番大事なのは相手の文化や価値観、生活スタイルなどを含めて「知る」事です。

外国人の問題行動もこういう習慣があるからこういう行動をしてしまうのかといった理解が進めば、我慢できるところは我慢してあわせたり、直すべきところは直したりすることができます。そういった意味でこういったイベントの意義は大きいのではないでしょうか。

なかなか素敵なイベントなので是非訪れて欲しいし、他の地域でもこういった交流が生まれるといいと思います。

* ガムラン演奏 *

羽根木公園 ガムラン演奏の様子
ガムラン演奏の様子

プレーパークがインドネシアにワープしてしまったような空間となります。

プレーパーク内でも定期的に色々なイベントが行われていますが、大半が子供向けの小さなイベントです。

でも中には大人が楽しめるようなものもあって、毎年五月の終わり頃に「音工場Omori」という団体によってインドネシアのバリ島の伝統芸能であるガムラン演奏と舞踏のコンサートが行われます。

この日はプレーパークの中に舞台が設置され、インドネシア料理の販売が行われ、緑豊かなプレーパークが異国情緒あふれる独特の雰囲気になります。

こういった普段体験できないような異国の伝統芸能を手軽に、しかも無料で行っているのは素晴らしいことです。(詳細はプレーパークのページに載せています。)

* 感想など *

夕暮れの梅の花
夕暮れの梅の花

自分の好きな梅の絵を探しに出かけてみてください。

羽根木公園といえば梅まつりが有名です。情報誌などにも頻繁に取り上げられ、今では東京では広く知られるようになりました。梅の木が多く植えられているので、梅の開花時期の散策は花が美しいだけではなく、梅の香りが漂っていてとてもさわやかな気分になれます。

梅以外には特に特徴がない公園と思われがちですが、古くから行われている雑居まつり、独特の価値観を持った遊び場プレーパーク、近年ではガムラン演奏なども加わり、とても多様性に富んだ公園です。

こういった多様性を感じながら羽根木公園で元気に遊び、育っていく子供たちは、きっと鳥のように大きく羽ばたき、木の根ように少々のことで動じない大人になっていくことでしょう。

せたがや百景No.17 梅と桜の羽根木公園
ー 風の旅人 ー
2018年11月改訂

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* 地図、アクセス *

・住所代田4-38
・アクセス小田急線梅ヶ丘駅から徒歩。
・関連リンク羽根木公園(世田谷区)、梅ヶ丘商店街

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