* 真竜寺と大雄山最乗寺 *
真竜寺の門前
大きなお寺ではありません。
下北沢の北口の商店街から少し外れた一角に真竜寺(真龍寺)があります。曹洞宗のお寺で昭和4年にこの地に建てられました。
境内の周囲は建物に囲まれていて、敷地内には墓地もなく、とても小ぢんまりとしたお寺です。
大きな天狗のお面と高下駄と葉うちわ
普段でも見ることができます。
境内に入ってまず目に入るのが大きな天狗のお面が置かれている神輿舎のような建物です。
中を覗くと赤い大きな天狗のお面がドンと祀られていて、面の他にも葉団扇や高下駄も置かれています。
置いてある解説によると、天狗の長い鼻は商売繁盛を、葉うちわは平和を、高下駄はどんな困難にも負けない勇気を表しているとの事です。
天狗の鼻には別の意味もあったりします。当たり障りなく書くなら子孫繁栄・・・ってな。
真竜寺の本堂と賽銭箱
葉団扇の紋が目をひきます。
天狗の置かれている建物の後ろに本堂があります。本堂は木造の建物で恐らくこの地に建立された当時の建物だと思われます。
建物よりも目が行くのが賽銭箱で、大きな天狗の団扇がつけられています。
天狗に関するものが多いのはこの寺が小田原大雄山最乗寺の分院にあたることに関係しています。
奉納された巨大な下駄(大雄山最乗寺)
巨人用といった感じです。
奥の院へ続く階段(大雄山最乗寺)
雰囲気はいいけど、しんどい道中です。
大雄山最乗寺といえば、古刹中の古刹。小田原の北の足柄の山の中にある古くから霊験新たかな修験場です。東京から近いので行かれた方も多いでしょうが、うっそうとした森の中にあり、神秘的な雰囲気満点のお寺です。
ここには巨人が履くような大きな下駄が奉納されています。そしてその周りは多くの鉄やアルミの下駄が奉納されていて、その様子は圧巻です。
奥の院まで行くのにとんでもなく長い階段を登らなければならなかったりと体力が必要なお寺ですが、世田谷つながりということでもし興味を持ったなら次に訪れる目的地の候補にしてはどうでしょう。
* しもきた天狗まつり *
天狗まつりのてぬぐいと提灯
グッズが販売されたり、年々華やかになっています。
真竜寺では節分の頃の週末に一風変わった節分行事、「しもきた天狗まつり」が行われます。
この行事の天狗道中では境内に置いてある大きな天狗の面と共に大天狗や裃姿の年男など100人あまりが下北沢の商店街を練り歩き、豆をまいて商売繁盛や家内安全を願います。
商店街が続く賑やかな下北沢の町を練り歩くということでとても盛り上がるイベントとなっていて、年々賑やかに、そして知名度が上がっています。
真竜寺本堂の豆煎り釜
豆煎りの神事が行われた後です。遅刻しました・・・。
天狗まつりに関してですが、この行事はきちんと節分の日に行われる訳ではなく、節分に近い週末に行われています。ですから正統派の節分行事というより、どちらかというと商店街主催のイベント色の強い行事となっています。
当日はまず境内で式典や豆炒り式などが行われます。その後隊列を整えて天狗道中が下北沢の町へ繰り出していきます。
天狗道中の先頭
結構長い列になります。
この行事は真竜寺のある一番街商店街の管轄のようで、天狗道中は小田急線の北側にある商店街を練り歩きます。だいたい阿波踊りが行われるエリアと同じです。
先頭は商店街会長だったでしょうか。そして区議会議員の人や天女役?の人などが続き、白い衣装をまとった太鼓部隊が続き、赤い面を付けた大天狗、黒い面を付けた小天狗、そして大勢の年男、年女が続いて、しんがりに大きな天狗の面を載せた山車が続きます。
天狗道中の様子
通りがかった人は何事かと足を止めていました。
天狗祭りの目玉は天狗道中という事になるのですが、町を練り歩きながら盛大に豆をまくという節分行事は他ではあまりないと思います。しかも節分なのに天狗様が主役というのが珍しさに拍車をかけています。
調べてみると、真竜寺が建てられた昭和4年頃から行われていたとか。実は伝統ある行事という部類になるようです。
ただ、昭和40年頃から昭和53年までは中断していたので、現在行われているのは第二期天狗道中といった扱いになるようです。
天狗様が見守る豆まき
所々で止まって整列した後に豆をまきます。
所々で豆をまきつつ進み、何カ所かの決められた場所で一列に年男や年女が並んで大々的に豆をまきます。
ここでの特徴は「鬼は外」と言わない事です。それは真竜寺の守護神である道了尊の化身、天狗に関係していて、威徳と神通力で厄災を追い払ってくれるのです。
(*道了尊とはお寺の守護を願い天狗となって昇天したといわれる道了薩たという方のこと)
それに真竜寺を開いた道海禅師の教えにも「心の中に福が充満すれば、鬼は自ら退散していく」とあり、「鬼は外」と言う必要がないから言わないのだそうです。
豆まきの様子
楽しそうに豆まきをしている感じでした。
豆まきは何処でも同じで熾烈な争奪戦が繰り広げられますが、ここでは景品の入った袋などはなく、下さいと頼めば豆をくれるので争奪戦を楽しんでいるといった感じです。豆が投げられるのを待つ人々の楽しそうな笑顔が印象的でした。
商店街を回り、真竜寺に戻って来てからが本番。今度は景品の引換券が入った袋などが混ざるようなので、熾烈な奪い合いの豆まきになるのではないでしょうか。(こちらの方は訪れたことはないので詳しくはわかりません。)
大天狗と天狗の面
下駄が高いので歩くのが大変です。
見ていて思ったのが、もちろん豆を受け取るための袋などを用意して天狗パレードをお目当て出来ている人は楽しんでいるのですが、たまたま歩いていて、なんかやっていると豆まきなどに参加して楽しんでいる人が多いなと思いました。
歩いていて、「あっ、なんかやっているよ。」「あっ、天狗だ。」「ねぇねぇついて行ってみようよ」といった若い人の会話がよく聞こえてきました。そうやって下北沢のファンがどんどんと増えていくのでしょうね。いいことだと思います。
お掃除部隊(グリーンバード)
パレードが通過した後はお掃除部隊が活躍します。強烈にマメのにおいがします。
町で豆をまきながらパレードするといった行事は全国的にも珍しいです。その理由は書くまでもないのでしょうが、後処理が大変ということにつきます。
でもここでは強力な助っ人がいます。それはグリーンの22番のゼッケンを付けている下北沢で掃除活動を行っているグリーンバード(green bird)の下北沢チームの皆さんです。
パレードが通過した後は彼らが落ちた豆をせっせと掃除していきます。人の足で踏まれてつぶされているのでこれが大変な作業です。見かけたら是非応援して下さい。
それにしても節分豆って意外と匂いが強烈です。こんなに節分豆って強烈に匂いがするんだとビックリすると思います。
* 感想など *
行列の後ろから
行列に参加するとこんな感じで下北沢の町が見えます。
下北沢の町を天狗が練り歩く。そう聞くと何かワクワクしてきませんか。そう、面白そうだと思ったら出かけてみましょう。誰でも楽しめるし、何より見ていて楽しい豆まきです。豆を拾えれば更に楽しい気持ちになれます。
地域で協力して盛り上がり、そして参加するみんなが楽しめる行事はいいものです。町中で撒いた豆の処理が大変だとは思いますが、今後も地域で協力して続いていってほしい行事です。
せたがや百景No.14 天狗まつりと真竜寺
ー 風の旅人 ー
2018年3月改訂