世田谷公園
池尻1-5-27中央広場の噴水を挟んで北側がスポーツ施設。南側の公園ではプレイパークが開かれている。園内の小高い丘には区制50周年(昭和57年)を記念して、子ども達から50年後の子ども達へのメッセージなどを入れたカプセルが埋められている。ミニSLは土・日や祝日、学校の休みに合わせて走り大変な人気を集めている。(せたがや百景公式紹介文の引用)
1、世田谷公園の概要

入り口は三宿通り沿いにあり、遊歩道で公園とつながっています。
国道246号の三宿交差点から三宿通りを南に向かうと、道の両脇に欧米的なオープンカフェなどお洒落な飲食店が何軒か並んでいます。雰囲気のいい店がまとまって並んでいると、通りの雰囲気が少し欧米的に感じるもので、ちょっとおしゃれなエリアとしてメディアに取り上げられることもあります。
その三宿通り沿いに世田谷公園の入り口があり、一区画ほど遊歩道を進むと公園があります。

世田谷公園は世田谷区立の公園です。昭和40年に国有地を都から移管され、世田谷区が4年の歳月と3億6千万円の費用をかけて改修しました。
現在でも無償貸付を受けている広大な土地ですが、都心にほど近い一等地にこれだけの空間があったのには、ちょっとした理由があります。
時をさかのぼると、世田谷公園を含めたこの付近一帯は、駒沢練兵場、近衛野砲兵連隊兵舎などといった軍事関係の土地として利用されていました。
明治30年頃から池尻や三宿地域に軍事関係の施設や工場などが造られていき、昭和になる頃には兵隊村と呼ばれるほどの規模でした。

*国土地理院地図を書き込んで使用
戦後になると、兵隊村の跡地は都営住宅、小中学校、昭和女子大、そして世田谷公園などに変わっていきます。
ただ、戦後すぐの写真を見ると、演習場となっていた広大な土地が、びっしりと畑で埋まっていて、驚きます。まるで大きな農場。三宿はかつて広大な農場だった・・・。という事実はあまり知られていないかと思います。

*国土地理院地図を使用
色々と調べてみると、戦後の東京は外地からの引揚者や空襲によって焼け出された人たちが溢れ、極度の住宅難、そして食糧難となっていました。そこで軍事施設がそういった人たちの受け皿として利用されたようです。
ここ池尻、三宿でも、兵隊関係の建物はそういった人たちへの生活の場となり、演習場として使われた土地は一時的に畑として使用されたようです。
都営住宅の建設、経済や生活が落ち着くなどすると、その跡地に世田谷公園や三宿駐屯地が建設されていきます。公園の開設が戦後から少し間が開いているのはこのためです。
今ではこの界隈はすっかりと都会的な住宅地となってしまい、町をぶらぶらと散策していても兵隊村だった面影を探すのは困難です。名残と呼べるものは、施設があった跡地に設置されている小さな石柱や、あえて挙げるなら世田谷公園の隣にある自衛隊の三宿駐屯地(病院や衛生隊)ぐらいでしょうか。


世田谷公園の中心であり、象徴するエリアです。
世田谷公園は都会っぽく縦長の構造をしていて、開放感のある噴水広場を中心に、野球場、プール、テニスコート、洋弓場、平和資料館、交通児童公園、タイムカプセルの丘、SL広場、遊具広場、プレーパークが所狭しと設置されています。
どちらかというと芝生などよりも舗装された部分の多い都会的な公園といえますが、園内には憩いの場所も十分にあり、子供が遊ぶ場所もたくさんあるので、息苦しさを感じることはないです。むしろバリアフリーに対応しているので、ベビーカーを押したり、足の悪いお年寄りなどにも利用しやすいと言えるかもしれません。
都心に近いこの界隈は、遊び場や緑地、広い空間が少なく、いつ訪れても近隣の住民を中心に多くの人が思い思いにくつろいでいるといった印象です。

夕日を浴びる噴水はとてもきれいです。
世田谷区の公園紹介によると、世田谷公園の設置理念は「緑と太陽の文化都市世田谷区にふさわしく全体として調和のとれた風景園の感じで、あらゆる年齢層の運動と休養に利用できる総合的な公園」となっています。
私個人的には、三宿地域という土地柄もあって、近所に住む若奥さんがベビーカーを押しながら公園で散歩して、カフェでくつろいで優雅な時間を過ごす・・・というのが、一番世田谷公園のイメージに似合うように感じてしまいます。
もちろんこれは私の勝手なイメージですが、遊び場が多く、バリアフリーにも対応しているので、あらゆる年齢層、例えば子供やお年寄りでも訪れやすい公園になっているのは確かで、実際多くの子供たちが訪れ、お年寄りが散歩している姿もよく見かけます。


設置理念には、「緑と太陽の文化都市世田谷区にふさわしく全体として調和のとれた風景園」という文面があります。
その理念の象徴ともいえるのが、世田谷公園の中心部分の噴水広場です。噴水の周辺は開放感あふれる空間となっていて、噴水広場に立つと、天気が良ければ青い空、そして公園内の緑が多く目に入ってきます。
とても気持ちのいい空間になっていて、時間、季節ごとに噴水の周りを含めてとても絵になっています。きっと空間デザイン的に美しいのでしょう。
昼間は噴水が高く上がり、風向きによっては水しぶきが飛んできます。その周りでは、天気のいい日には弁当を広げたり、芝生で寝そべったりと、くつろいでいる人の姿を多く見かけます。

都会的な公園と紹介しましたが、十分に四季を楽しむこともできます。
まずは春。園内に桜の木は多くありませんが、噴水広場の南側に少しまとまってあります。ただ、花見をする場所が限られるので、花の下での宴会スポットとしてはちょっと微妙な感じです。


5月の連休前後にはタイムカプセルの丘がつつじで埋め尽くされ、とてもきれいです。夏にかけては木々の緑が美しいく、秋になると桜や三宿基地側の入り口にあるケヤキ並木の紅葉が美しいです。
その他、園内には花壇が数多く設置されていて、季節ごとにきれいな花を楽しむことができます。きっとボランティアの方々が手入れをされているのでしょう。とまあ、四季を感じながら散策を楽しめる公園でもあります。
2、ミニSLチビクロ号

世田谷公園の中で一番特徴的なものは、休日などに園内を運行しているミニSLです。区制50周年を記念して昭和57年5月に設置されたもので、区内の公園ではここだけにしかありません。
機関車の名前は「ちびくろ号」といい、元々は本物の蒸気機関車を縮小させたものでしたが、平成17年に電気モーター式に改造されました。大きな鉄道模型というか、人がまたがって乗れる鉄道模型といった感じです。

かなり精巧な造りをしていますが、電気モーター式の駆動です。
現在では、「せたがや公園キンカン三姉妹ミニSL」という愛称になっているようです。キンカン?あの柑橘系の・・・??? 最初に聞いたときは、なんでキンカンなの?何か世田谷と関係があったっけな?と、驚いたのですが、ネーミングライツに拠るものでした。
ネーミングライツとは、公共の公園やスタジアム、建物などの名称に、有料で企業名や商品名を命名する権利を付与するといったもので、その収益は施設や事業の運営に当てられます。
世田谷公園のミニSLは、株式会社金冠堂と令和4年4月から3年間のネーミングライツパートナー契約を結んだので、令和7年3月まで「せたがや公園キンカン三姉妹ミニSL」という愛称となります。
こんな名前嫌だ。愛着がわかない。などと思う人もいるかもしれんませんが、一番大事なのは質のいいサービスが持続されること。そして、料金が上がらないことです。今後も多くの子どもたちが気軽にミニSLを楽しむ環境が維持できるのなら、こういった試みも悪くないのではないでしょうか。大いに賛成です。

天気のいい休日には行列ができます。
ミニSLは子ども達に大人気となっていて、天気のいい休日に訪れてみると、長い乗車待ちの行列ができていました。
人気の理由は料金の安さにあります。平成30年10月に利用料金の改定があり、ちょっと値上がりしてしまいましたが、小学生以下は無料で、小学生が50円、中学生以上は100円(以前は30円と70円)と、駄菓子を買う程度のお小遣いで乗れてしまいます。
この値段は親としてもありがたく、子供に乗りたいとせがまれた時、「この前乗ったばかりでしょ!」などとためらうことなく、乗せてあげることができます。(混雑していなければ・・・)

森の中を走るといった感じです。
ミニSLは、約280mの軌道を約2分半で一周します。木々のトンネルをくぐりながら走るといった感じなので、とても気持ちよさそうにSLが走っていました。もちろん乗っている子供たちも楽しそうでした。
秋には「せたがやこどもSLまつり」が行われ、特別記念列車が運行されたり、鉄道模型が展示されたりと様々なイベントが行われます。
この世田谷公園のミニSLと、馬事公苑の馬車(イベント時のみ)は都会的な区内にあって子供にとても貴重な体験をさせられる存在となるでしょう。
3、世田谷公園内の施設

ミニSLの他にも公園内には特徴的な施設が幾つかあります。まずはタイムカプセルの丘。これは世田谷区区制施行50周年を記念して1982年(昭和57年)に作られたもので、頂上部にはタイムカプセルが収められている六角形のベンチのようなオブジェがあります。
タイムカプセルには、当時の子ども達が50年後の子ども達に向けたメッセージや、当時の教科書などが詰め込まれているそうです。
開けられるのは区制施行100周年の2032年。10歳だった子どもは50歳年を取って60歳ってことは・・・、ちょうど当時の自分よりも少し小さい孫がいるぐらいの年でしょうか。その時にどんな思いで開封するのでしょうか。その頃まで平和な世の中が続いていて欲しいものです。

暗くならないと存在感がないです。
平和といえば・・・。って、ちょっと強引なつなぎですが、園内に「平和の像」と「平和の灯」があります。世田谷区が昭和60年8月15日に平和都市宣言を行ったことに由来して、その5周年を記念して設置されました。
平和の灯の火は、広島の「平和の灯」と長崎の「誓いの火」を分けてもらったものになります。といっても、正直なところ、なんかカプセルの中で火が燃えているといった感じで、薄暗くならないとあまり存在感がありません。
平和の像は平和の祈りとを表現した像です。ですが、なぜに上半身裸の女の人なの?ってな感じです。子どもが遊びまわる公園においてぽつんと佇む像がちょっと浮いているような気がします。

噴水広場の片隅にたたずんでいます。
実際に訪れていないのですが、平成27年に玉川小学校にあった平和資料館が世田谷公園内に移設されました。
この世田谷公園界隈には多くの軍事施設があり、大規模な空襲がありました。そういった事情からもここに移転できてよかったように思いますし、公園内にあることで多くの人が訪れやすい環境になったこともよかったように思います。
世田谷区内には他にも多くの軍事施設があり、多くの土地で空襲がありました。近年ではそういったことを知る人、いや、知ろうとする人が少なくなってきたと感じます。
なかなか積極的に興味を持つ事柄ではないと思いますが、何かキッカケがあったり、興味を感じた時にでも訪れてみてください。

昭和48年に国鉄から貸与されたものです。

まるで自動車教習所みたいなスペースです。
ミニSLではなく本物のSLも公園内にあります。といっても動かなくなったものを保存している車両です。運転台にも入ることができ、小さな駅舎が付随しているといったなかなか高待遇?で設置されています。
このSLが置かれているエリアは「交通児童遊園」と名づけられていて、実に都会らしく面白い施設となっています。
ここは自動車免許教習所の縮小版みたいなレイアウトで道路コースが造られていて、そのコースを足こぎの三輪ミニカートで走ることができます。(無料、小学生三年生以下)
三輪ミニカートに乗った子ども達が、仮想道路コースを母親に見守られて走っていたり、赤信号では停まりなさいと注意されている様子は、まさに自動車教習所といった感じです。
車や交差点だらけの都会において、安全に子供が交通ルールを学ぶことができるといったいい施設ではないでしょうか。ちょっと感心してしまいました。

ロッジ風の建物で冒険心をくすぐります。

ここでは自己責任で子供たちが伸び伸びと遊んでいます。
園内には、子供の遊び場、プレーパークも設置されています。区内には4カ所プレーパークがあり、そのうちの一つとなり、ここではプレーリーダー(大人)の元で「自分の責任で自由に遊ぶ」をモットーに遊びまわることができます。
子供達が腕白に遊び回っている様子を見ていると、その腕白ぶりにハラハラすることもあります。でも、子供の遊びはこうでなければ・・・。というのは、現在の事情では懐古主義的な考え方になるかもしれませんが、そういった思いを抱いている親にとっては、素晴らしい遊び場になるはずです。
プレーパークについての詳細は元祖である羽根木公園内のプレーパークが風景資産の項目にあるので、そちらに詳細を載せています。
4、イベントなど

色とりどりの鯉のぼりが空を泳いでいます。
毎年4月中旬から5月連休明けまで、噴水広場付近に区民などから寄贈された鯉のぼりが飾られます。これは世田谷公園だけではなく、他の区立の公園でも行われていますが、一番数が多く、見栄えがいいのがここです。
鯉のぼりが泳いでいる様子を見ると、端午の節句の季節感を感じることができます。噴水を背景にしてもいいですし、ちょうどツツジが咲くタイムカプセルの丘を背景にしてもいいですし、噴水広場の芝生に寝転がって空を泳ぐ様子を見るのもいいかもしれません。

いい品があることで有名らしいです。
ちょうど訪れた日、園内でフリーマーケットが行われていました。そこそこの規模で、それなりに混み合い、活気がありました。
世田谷公園でフリーマーケットか。何か庶民的でいいな。お洒落な感じがする公園かと思っていたけど、地元に密着した普通の公園なんだな。と、その様子を見て親近感がわくというか、ほのぼのとした気分になりました。
しかしながら、近づいて売っているものをよく見ると、高そうな日用品やら子供用品ばかり・・・。やっぱり高級住宅街にある公園でした・・・(笑)。
フリーマーケットは年に何回くらい行われているんだろう・・・などと少し調べてみると、世田谷公園で行われるフリーマーケットは比較的歴史があるようで、昔はスニーカーコレクターの集う集合場所として知られていたそうです。
そして今では質の高い比較的新しい品物が沢山あることで有名で、沿線の神奈川方面からも沢山の出店や来客があるみたいです。知る人ぞ知るってやつでしょうか。
フリーマーケットの日時などに関してはフリーマーケットの専門サイトや「広報せたがや」などで調べる事ができます。フーリーマーケットの日に合わせて掘り出し物を捜してみるのもいいのではないでしょうか。

園芸用品や草木の市が立ちます。
また植物や園芸用品を扱った世田谷園芸市も行われます。園芸市は馬事公苑前のケヤキ広場などでも行われている行事なのですが、私が訪れたときはあまり活気がなかったです。
* 防災訓練 *

多くの団体が参加しての訓練でした。海外のメディア(アジア系)の取材が多かったです。

自衛隊も参加していました。木々の向こうは三宿基地です。
毎年なのかわかりませんが、東京都などとの合同の大規模な防災訓練もここで行われます。隣が自衛隊の駐屯地というのもこういう場合には好都合なのでしょう。
防災訓練の当日は様々な訓練や体験、企業などのPRブースが出ますので、それなりに楽しむ事ができます。

本当に災害があったような大がかりなものでした。
噴水前の広場での訓練では、ここまでやるかというぐらいとても大掛かりな大道具を使っていました。設置するのにさぞ大変だったと思いますが、後片付けはもっと大変そう・・・。
いつどこでどんな災害が起きるかわからない世の中なので、これだけ真剣に訓練を行ってくれていると、住民としては安心です。
こういった訓練もそうですが、万が一、大災害が起こったとしても、世田谷公園に逃げ込めば隣は自衛隊の駐屯基地。しかも衛生部隊。何とかなりそう・・・といった安心感があるというのも、世田谷公園のいい部分かもしれません。
5、感想など

噴水がとても絵になる公園です。
世田谷公園は敷地内に様々な施設がある都会的な公園ですが、十分に四季を感じることができますし、遊具、ミニSLをはじめ子供が遊ぶ場所も豊富で、とてもバランスのよい公園となっています。まさに設置理念どおりにあらゆる年齢層の運動と休養に利用できる総合的な公園と言えるのではないでしょうか。
また周辺にはオープンカフェやファミリーレストランもあり、日常的な散策からちょっと優雅な休日の散策まで幅広く利用できる公園となっています。
私の一番のお気に入りは世田谷公園の象徴ともいえる噴水広場です。とても解放感があり、時間、季節ごとに噴水の周りを含めて絵になっています。空間的なデザインが美しいからそう感じるのでしょう。
いつ訪れても素敵ですが、いろいろな季節、いろいろな時間帯に訪れ、とびっきり絵になる瞬間を見つけてください。ポケモンを探すよりも楽しいかもしれませんよ。って、もういないのでしたっけ・・・。
せたがや百景 No.1世田谷公園 2025年2月改訂 - 風の旅人
*地図・アクセス等
・住所 | 池尻1-5-27 |
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・アクセス | 最寄り駅は田園都市線池尻大橋駅、あるいは三軒茶屋駅。駅から少し離れています。 |
・関連リンク | 世田谷公園(世田谷区公式)、世田谷公園ミニSL、認定NPO法人プレーパークせたがや |
・備考 | 世田谷区立公園。利用の詳細は公式サイトを参照。 |