世田谷散策記 タイトル
せたがや地域風景資産 #2-27

仙川・川面に映る桜並木道

砧7丁目 (打越橋~石井戸橋)

東宝大工センター脇の桜並木は、並木自体の美しさだけでなく、仙川の川面に映り込んだ景色も見所です。いこいの遊歩道として地域にも愛されている桜並木の風景は、四季折々の魅力にあふれています。(公式紹介文の引用)
*東宝大工センターは取り壊され、現在は撮影スタジオになっています。

広告

1、東宝撮影所と仙川の桜並木道について

成城学園前駅の南側(2019年)の航空写真(国土地理院)
成城学園前駅の南側(2019年)

国土地理院地図を書き込んで使用

世田谷通りの砧小学校交差点から成城学園前駅に向かっている道は、成城六間通り。その途中の仙川沿いに東宝の撮影所があります。高台にある成城からみると崖下の土地、成城の外れということになるのでしょうか。

ここに撮影所が建てられたのは、昭和7年(1932年)。最初にできたのは、映画録音会社のP.C.L(写真科学研究所)でした。昭和11年には関連の三社が合併して東宝となり、撮影所も東洋一を誇る規模に発展していきます。

東宝スタジオの入り口の写真
東宝スタジオの入り口(東宝日曜大工センターがあった頃)

撮影所の他にも住宅展示場とホームセンターがありました。

一方、成城の町は昭和2年に小田急線成城駅が開通し、本格的に町の形成が始まっていくことになります。成城を開発したのは、この地に移転してきた成城学園。駅周辺の土地を買い、住宅地として整備し、その分譲した費用で学校の移転を行いました。

成城学園が目指していたのは、学校が町に溶け込むような学園都市。しかし、周知の通り、成城は高級住宅地として発展していくことになります。

東宝スタジオ 7人の侍の壁画の写真
7人の侍の壁画

東宝、そして黒澤明監督の代表作です。

成城が人気のある高級住宅地になった要因は幾つかあげられますが、その一つに、東宝の撮影所の存在があげられます。

それは、映画俳優が撮影所に近いという事もあって成城に暮らすようになり、また撮影所から近いので、成城を含めたこの地域がロケ地として使われる事が度々ありました。

映画俳優が暮らす町、映画のロケ地の町といった憧れから人気となり、人気のある町=地価高騰=高級住宅地となっていきました。

本当のお金持ちというのは、派手に目立つようなことをしないものです。鼻につくような行為は敵を増やすだけだからです。なので、古くからの高級住宅街に住む人からすると、成城はミーハーな町、チャラい町、同じ高級住宅地の土俵に上げてくれるなといった拒絶感が強かったりします。

東宝スタジオ ゴジラの像の写真
ゴジラの像

撮影スポットになっています。

設備の古くなった撮影所は、2003年ごろから2011年にかけ、足かけ8年、総額100億円を投じた大改造が行われました。

この大改造計画により、スタジオの実に90%以上の施設が建て替えられ、ステージは8棟、付帯施設は11棟が新築され、さらに光ファイバー網の敷設等といった、デジタルやハイテク技術に合わせたインフラ等の機能更新も行われました。

このことにより、ここで企画開発のプリプロダクションから仕上げのポストプロダクションまでの一貫した生産ラインを提供できるようになり、再び東洋随一と胸を張れるような近代スタジオに生まれ変わったようです。

といっても内部の見学は基本的にできないので、部外者にはへぇ~そうなんだ~といったぐらいで実感がわきませんが、メインゲートの建物や見える範囲内の建物が新しくなったり、建物の壁に7人の侍の絵が描かれたり、受付の建物の前にゴジラの像が設置されたりしたのはこの時期のことです。

東宝スタジオ 仙川沿いに並ぶ東宝の建物と桜並木の写真
仙川沿いに並ぶ東宝の建物と桜並木

仙川沿いにスタジオなどの白い建物が並んでいます。

ゴジラの像があるメインゲート前の道を進むと、昔は関連会社の東宝大工センターというホームセンターがありました。それ以前はボーリング場だったそうです。

この東宝大工センターは、大道具係の人が材料を調達しやすくするために造ったとのことで、その品揃えの豊富さは驚くほどでした。日曜大工を行うときには本当に重宝したものです。

しかしながら、東宝の大改造計画の一環なのか、2010年1月で閉店してしまい、その後、一般の企業が経営する「くろがねや成城店(DCM)」というホームセンターに替わりました。

とはいえ、以前のように大工道具などの品ぞろえは引き継いでいて、余程の専門職の人でない限り、今まで使っていた人は困らなかったはずです。

そのホームセンターも2024年5月に閉店し、跡地にはスタジオが建てられるそうです。

東宝スタジオ 仙川沿いの遊歩道の写真
仙川沿いの遊歩道

東宝の撮影所らくしゴジラがあしらわれています。
桜の時期以外も気持ちのいい川辺の道となっています。

東宝スタジオ 仙川沿いの遊歩道 映画の道具が詰まった装飾の写真
映画の道具が詰まった装飾

東宝の話が長くなってしまいましたが、東宝スタジオや東宝大工センターがあった仙川沿いは遊歩道として整備されていて、とてもいい散歩道となっています。

遊歩道沿いには桜が植えられていて、桜の時期にはとても美しい桜並木となり、それ以外の時期にも緑の美しい並木となっています。遊歩道沿いのフェンスの所々にゴジラや撮影用のカメラの絵が入っているのもここならではです。

東宝撮影所付近の仙川(1980年頃)の航空写真(国土地理院)
東宝撮影所付近の仙川(1980年頃)

国土地理院地図を書き込んで使用

この付近の仙川は、1970年代に治水対策のため大改修工事が行われました。川筋が現在のように直線的になり、河道を深く掘削し、護岸はコンクリートで固められました。

工事が終わった1980年頃、この付近の川沿いに桜が植えられました。地元からの要望なのか分かりませんが、これが現在の桜並木になります。

仙川・川面に映る桜並木道 地域風景資産のプレートの写真
地域風景資産のプレート

所々に設置されています。
地元出身のアーティストがデザインしたものだそうです。

川にせり出すようにして枝が伸びているので、川面に桜が映ってきれいで、特に幾つか架けられている橋の上から眺めると、実際の桜と川面の桜が合わさって重厚な感じとなります。そういった美し風景から地域風景資産に選定されています。

川沿いのフェンスにはさりげなくせたがや地域風景資産のプレートが設置されています。これは仙川・緑と水の会の方が選定されたことを多くの人に知ってほしいという願いから、許可をもらって取り付けたものです。

桜の花びらを模ったなかなかおしゃれなプレートですが、メンバーの知り合いの地元出身のアーティストがデザインしたものだそうです。シンボルマークのもと、みんなでこの風景を大事にしようといった共通認識が芽生えれば、この風景も安泰でしょうか。

広告

2、仙川沿いの桜並木

成城東宝スタジオ脇の仙川沿いの桜並木 下流部の桜並木の写真
下流部の桜並木

サミットの裏手、旧登戸道の橋から遊歩道が始まります。

成城東宝スタジオ脇の仙川沿いの桜並木 ゴジラと桜並木の写真
ゴジラと桜並木

東宝スタジオ間を移動する橋の手前です。

成城東宝スタジオ脇の仙川沿いの桜並木 橋の上からの写真
東宝スタジオの橋の上から

川の左右に遊歩道が設置されています。

仙川の遊歩道は世田谷道の旧道、登戸道の沿いの橋、ちょうどサミットストアーの駐車場から日大商学部へ抜ける細い道に架かる橋のところから始まっています。遊歩道を進むと、左手が東宝スタジオになったあたりから桜並木が始まります。

最初の橋は渡れませんが、二つ目の橋は川の左右にあるスタジオを車が行き来できる橋で、警備の人がいて一般の人でも渡ることができます。この橋の上からいい感じで写真が撮れるのでこの付近が一つの見どころです。

成城東宝スタジオ脇の仙川沿いの桜並木 東宝スタジオの橋より少し上流の写真
東宝スタジオの橋より少し上流

堰の手前では水面が鏡面のようになります。

成城東宝スタジオ脇の仙川沿いの桜並木 ホームセンターの手前の写真
ホームセンターがあった手前

現在は右側に塀ができているようです。

成城東宝スタジオ脇の仙川沿いの桜並木 ホームセンター付近の写真
ホームセンターがあった付近

ホームセンターのところに架かる橋から見た上流の様子です。

スタジオ間を結んでいる橋のところからは左右の両方に遊歩道があり、どちらでも歩くことができます。この付近は比較的真っすぐですが、途中に堰があり、水面に映る桜並木が美しいです。

ホームセンターがあったところにも橋があり、駐車場や住宅展示場を訪れる車が通る車道となっていました。ここからは上流、下流ともに真っすぐな桜並木が見えるので、多くの人が写真を撮っています。

世田谷通り 大蔵団地の坂
世田谷通り 大蔵団地の坂

切り通しを造って設置された人工的な坂道です。

また、この界隈には桜の名所が多いです。仙川を少し下流に進むと、世田谷通りに出ます。ちょうどこの付近には大蔵団地があり、大蔵団地のところが桜のトンネルとなっています。

仙川と世田谷通りが交わる場所では、大きな大仏が世田谷通りを見守っています。これは大蔵大仏で、何と回転するので回転大仏と呼ばれていたりします。

この大仏のあるお寺が妙法寺で、境内には立派な枝垂れ桜があり、見ごろの時期にはライトアップされます。ソメイヨシノより早く咲くことが多いですが、気候次第では同時に楽しむこともできます。

もちろん成城といえば住宅地にある桜並木も有名ですし、少し足を延ばして、大蔵運動公園、砧公園と足を進めてみるのも悪くないかと思います。

3、花見ライトアップの様子

成城東宝スタジオ 桜ライトアップの告知の写真
桜ライトアップの告知

入り口にある橋付近に告知の案内板が置かれます。

成城東宝スタジオ 花見ライトアップの写真
二の橋付近のライトアップ

ゴジラの像や壁画の先にある橋です。

ここの桜並木は、桜の時期になるとライトアップされます。なんと、東宝の裏方さんたちが実際の撮影で使用している照明機材使ってライトアップしてくれるのです。

なんでも地域の方々との交流を深めるために行うようになったとか。今ではすっかりこの地域の春の風物詩となっていて、今年はいつから行うのだろう・・・と、桜が咲き始めるとそわそわする地元の人も多いです。

ライトアップの期間は予め決められた期間、だいたい5日程度で、年によっては開花が遅れて寂しい状態だったりしますが、東宝さんにも都合があるので、期間を延長したり、早まるということはないです。

ライトアップ期間中は、例年、地元の人を中心に多くの人が訪れています。といっても、5日間という期間があるし、そこまで有名なライトアップでないし、規模もそこまで大きくないし、交通の便がいい場所ではないしと、そこまで混雑しないのが嬉しいところです。

それから、ここの特徴は水面に桜並木が映っているところです。頭上だけではなく川面にも気にかけて散策してみてください。

成城東宝スタジオ 花見ライトアップ スタジオを結ぶ橋の上から<の写真
スタジオを結ぶ橋の上から

枝が川に伸び、川面にはその様子が映るのできれいです。

成城東宝スタジオ 花見ライトアップ ホームセンター付近の橋の写真
ホームセンター付近の橋

ここは広いので多くの人が橋の上で花見を楽しんでいました。

成城東宝スタジオ 花見ライトアップ ライトアップの時の遊歩道の写真
ライトアップの時の遊歩道

あんまり混雑しているといった感じではないので、
思い思いに記念写真を撮っていました。

成城東宝スタジオ 花見ライトアップ ライトアップの思い出の写真
ライトアップの思い出

デート等、いい思い出になりそうです。

ライトアップの写真を載せていますが、訪れたのは2009年~2013年の間です。ホームセンターがなくなるなど、状況が少し変わっていますので、混雑状況とか、現在とは少し様子が違うかもしれません。

4、感想など

成城東宝スタジオ 花見ライトアップ 川面に映る桜並木の写真
川面に映る桜並木

川面に桜並木が映る様子はとても美しいです。

桜並木があるこの付近の仙川は、コンクリートに固められたありふれた川ですが、川沿いに東宝撮影所があることで、周囲の風景がガチャガチャしていなく、とても雰囲気がいい川沿いの遊歩道になっています。

川に堰が設けられているのもいいところで、堰の場所では水面が鏡面の様に反射し、その様子を楽しみながら散策することができます。更には、東宝の厚意でライトアップもされます。昼間訪れるか、夜訪れるか、悩ましい部分ですが、文句なしにおすすめの桜並木の一つです。

せたがや地域風景資産 #2-27
仙川・川面に映る桜並木道
2025年2月改訂 - 風の旅人
広告

・地図・アクセス等

・住所東宝スタジオ横の仙川
・アクセス最寄り駅は小田急線成城学園駅から徒歩10分程度
・関連リンク東宝スタジオ
・備考ーーー
広告
広告
広告