* 萩原邸について *
三宿の住宅街の中に登録有形文化財に指定されている萩原さんのお宅があります。
文化財に指定されているということで、どれだけ凄い建物だろかと期待しながら訪れたのですが、路地の奥の方にあったのと、思ったよりも特別な感じではなかったので、たどり着くのに苦労してしまいました。
近年では建築方法や建材の進化、パソコンやインターネットの普及で柔軟にデザインが行えるようになり、また建築家やデザイナーも独自性を出すために様々な努力をしているので、歩いていると実に様々な建物が目に入ってきます。
そういった建物の多い世田谷の住宅地の中にあっては、確かに立派な邸宅なんだけど・・・というのが第一印象でした。
おそらく建築に興味がある人ならともかく、私のように知識のない人間がこの建物の前を歩いても特に気にすることなく通り過ぎてしまうのではないでしょうか。
なぜこの建物が登録有形文化財に指定されているかというと、近代建築の三大巨匠といわれるアメリカの建築家フランク・ロイド・ライトの弟子、遠藤新氏の設計によるものだからです。
ライト氏の建築は水平を強調するデザインが特徴的で、日本では帝国ホテル、山邑邸、自由学園明日館などが知られています。
そういった視線で改めてみてみると、屋根や玄関、窓枠などの水平が強調されているのが分かります。
それを踏まえたうえで、少し下がって日本のカクカクした区画や塀などといった路地の要素を含めて遠くから見ると、水平が強調されている分、その存在が引き立つような・・・感じがしました。
もちろんこれは素人目線で、しかも水平が強調されているぞと知った上での個人的な印象です。
現存の建物は大正13年に設計され、2階部分は昭和9年頃に増築し、その後も小さな修理を重ねながら歴史を重ねてきたものです。
内部の書斎には遠藤新設計の本棚や家具類も当時のままの姿で残されているそうですが、個人が生活するお宅なので内部への立ち入りはできません。
普段は一般に公開されていませんが、文化財の邸宅を利用してコンサートが行われることもあります。
「大正ロマンあふれるサロンコンサート」といったもので、音楽ルームにプロの演奏家を招き、20名ほどの観客を募集して行われます。って、中に大きな音楽ルームがあるのですね・・・。
その他、せたがや街並保存再生の会の町歩き見学会などでも内部を見学できる場合があります。
比較的家主が内部を公開するのに前向きな方のようなので、建築に興味のある方はそういった機会などを利用すれば内部を見学できたり、家主にお話を伺えるかと思います。