* 季節の野草に出会う小径について *

新緑の季節が一番すっきりしている感じです。
船橋三丁目にある都立千歳丘高校の敷地に沿う形で全長300mほどのL字型の小道があります。
地面は土のままで、道の真ん中や脇に設置された花壇などには花などが植えられていて、頭上には太陽をさえぎってくれる木があり、散歩するには最適な小道となっています。
この小道は「季節の野草に出会う小径」と名付けられていて、地域風景資産選定によって発足した「船橋小径の会」という地元のボランティアの人々が維持、管理しています。

ちょうど入り口のところに桜があり、春を感じることができます。
この小道は千歳丘高校敷地の西と北の2辺に接した道で、分かりやすい入り口は池田児童公園が付随している船橋地区会館の前と、烏山川緑道沿いです。
千歳丘高校や地区会館を目指して訪ればいいのですが、大きな通りに面しているわけではないので、土地に不慣れな人には分かりにくいかもしれません。遠回りでも烏山川緑道を歩いて訪れるのが一番確実かと思います。

この付近は敷地外の木々で並木っぽくなっています。

マンションの壁を覆うように植物が生えています。
昭和の始め、この地に上智大学のグラウンドができた際に、烏山川に流れる小さな川というか、水路がグラウンドに沿うような形に流れが変えられました。これが小道の原型となります。
昭和23年になると上智大学に代わって千歳高校がこの地にやってきます。
そして後年、生活排水で悪臭を放っていた水路は下水として地下へ埋められることになりました。
この貴重な空間を何か有意義に利用できないだろうか。地域で相談した結果、植物を植えて、昔の船橋で当たり前にあったような自然環境と風景にしようではないかとなり、「船橋小径の会」が結成され、現在のような舗装されていない小道が出来上がりました。

自作の新聞や活動内容等が張り出されています。
実はこの「船橋小径の会」、結構有名で、区の環境の賞を受賞したり、NHKのクローズアップ現代でも取り上げられたり、国土交通省の景観街づくり事例集に紹介されていたりしています。
実際の活動としては、年に数回こみち新聞を発行したり、月4回程度、町会、小学校、高校を含めた地域と区の協力を得て、小径の植物の手入れや草取りなど自然環境と風景の保全・育成を目的に活動しています。
こういった活動を行っている自治体、あるいはこれから始めようとするボランティア団体などにはお手本のような存在になり、実際に遠方からわざわざ見学に訪れる団体もあるそうです。

船橋らしい花壇となるでしょうか。地植えばかりではなく、ちゃんとした花壇も所々にあります。
実際に小道を歩いてみると、なんていうか、思っていたよりも地味な小道でした。
普通こういったボランティアの人が管理している花壇などでは、季節に合わせて色とりどりで華やかな品種の花が植えられているのですが、ここでは世田谷らしい野草、普通の感じの草花が植えられています。
なので花壇があるんだけど華やかさがあまりなく、なんか地味だな~、なんか普通の道だな、といった印象を受けました。
それに、名が知られているボランティアに管理されていて、とても雰囲気がいい小径、という前知識があったので、ちょっと期待を膨らませ過ぎたのかもしれません。

道の真ん中で咲いていて、部分的にアジサイの小道となっていました。
道は真ん中が花壇となっていて、その左右を歩くといった感じになっています。花壇は地植えだったり、舟形だったりと様々で、アジサイなども植えられていました。
場所によっては緑が多く、木のトンネルのようになっていたりしますが、木は道よりも道の外、マンションや個人宅、高校の敷地に多くなっています。
春には入り口部分にある桜の木、秋には途中にあるイチョウの木が季節感を出してくれますが、それ以外は全般的に緑色が多く、さりげなく咲いている季節の花を歩きながら探すといった感じです。
派手さはないけど、でもそれは逆に原風景に近いということであり、自然な感じの風景であり、心落ち着く風景、心安らぐ風景ともいうこともできます。

課外授業用でしょうか。小学校のプレートが設置されていました。が、雑草と区別が・・・。
こういった土の道は意外と管理が大変です。雨の後などちょっと油断すると雑草の茂みが出来上がってしまいます。
花壇のように仕切られているとまだ楽なのですが、長い道の全体を管理しなければならなく、かといって除草剤を撒くわけにもいかなく、地道に草抜きをしなければなりません。
ここの道ではそういった部分に目を向けて歩いてみると、さすがに名が知られている団体だけあって、雑草が煩雑にならないようにうまい具合に管理されているなと感心してしまいます。
個人のお宅のお庭でもそうですが、雑草の感じでうまくいっている、いないかがなんとなくわかるものです。

いかにも野草って感じの花が咲いていました。
地域の神輿が一斉にそろう秋祭り。派手な神輿や半纏の地区もあれば、シックな感じでまとめている地域もあります。地域柄というやつです。
地域の花壇なども興味深く観察していくと、やっぱりその地域の色が出るものです。ここはなんか玄人好みの小道といった感じでしょうか。
こういったことは好みの違いなので、人それぞれの感じ方が違うと思います。どうせ手入れするなら華やかな花を植えて明るい雰囲気にしたほうが・・・・といった意見もあると思います。
でも大事なのは野草がいいとか、色とりどりの花壇がいいとかではなく、地域できちんと話し合って方針を決め、多くの人が関わって管理していることです。
ここではそういったことがうまく機能していて、小道が雰囲気のいいものとなっているんだなと歩いてみて感じました。