世田谷散策記 タイトル
せたがや地域風景資産 #1-25

喜多見大橋から見た野川上流の眺め

喜多見6、7丁目 (玉堤通りと野川が交差する地点)

喜多見大橋の上からは、次大夫堀公園の樹木、国分寺崖線の樹木、野川の先には丹沢等の山並みが見え、自然環境に親しみやすい場所となっている。春には菜の花や桜が咲き、両岸には歩きやすいウォーキングロードも整備されている。(紹介文の引用)

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1、野川の河川工事と外環道

外環道のインターができる付近の野川の写真
外環道のインターができる付近の野川(2009年)

河川工事が行われる前です。奥の東名高速の付近にインターができます。

せたがや地域風景資産には全部で86の項目が登録されています。喜多見からも多くの項目が選ばれていますが、そのいずれも「喜多見ポンポコ会議」という団体の推薦によるものです。

この「喜多見ポンポコ会議」は、東名高速と中央高速、そして関越などといった東京から地方へ伸びる高速道路を、東京の郊外で環状に結ぶ外環道の建設が決まり、その予定路に含まれる自分たちの町は環境面などでどういった影響を受けるのか、どれほど外環道が必要とされていて、実際に完成したらどのような効果があるのかをきっちり検証してその是非を問いたいといった事がきっかけで、2000年4月に発足した団体です。

自分たちの暮らす町の魅力はなんだろう。守っていきたいもの、残しておきたいものはなんだろう。と考え、地域の文化や魅力を地域紙であるポンポコ新聞を発行して紹介したり、野川を守っていく活動を始めました。

その活動の過程で、地域風景資産という存在を知り、これを活用して喜多見のいい風景を残しておこう。となり、風景資産に推薦し、団体の活動が評価され、多くの項目が登録されることになりました。

野川の改修工事の写真
野川の改修工事の様子(2011年)

上と同じ場所。完全に川が新しくなっています。

その外環道は、東名高速が野川をまたぐ付近にジャンクションができ、野川の右岸に沿う形で成城方面に地下トンネルが掘られる計画になっています。

土地の買収が困難な時代となってしまったので、新しい道路が地上に造りにくいのは分かりますが、池尻付近の首都高山手トンネルといい、地下で高速道路がどんどんと結ばれる時代がくるとは・・・思ってもみませんでした。

子供の頃(昭和の時代)に描かれていた未来の予想図では、空中にパイプのような道がたくさん通っているような絵図ばかりでしたから・・・笑。

地下に高速道路が造られた場合、影響がでると思われるのは崖線の湧き水を含めた付近の地下水への影響と、野川の環境でしょうか。

とはいえ、都心部では地下水や湧き水の減少は避けられない問題です。人口が少なく、巨大な建造物のなかった大正時代には、世田谷区内の至るところで湧水が出ていたのですが、昭和初期には湧水量が激減し、今では多くが枯れてしまいました。便利さ、安全性、衛生問題と引き換えにした都市化の宿命といったところでしょうか。

野川には様々な影響が・・・と思っていたのですが、2010年頃から治水対策のための大規模な河川整備が行われていて、高速道路ができる以前に生態系が一度リセットされそうな感じです。

野川の改修工事の写真
野川の改修工事2

次太夫堀公園付近です。

野川の河川工事について調べてみると、昭和31年より1時間あたり30ミリの降雨に対応する工事が行われ、昭和57年には幾つかの台風で被害が出たことから、全流域にわたって1時間50ミリ降雨に対応できる整備計画を策定し、現在、その計画に沿って河川整備が行われている最中のようです。

訪れた時には河床が掘り下げられ、今までの面影が・・・というぐらい徹底的に河川の改修工事が行われていました。ここまで河川が人工的に工事されてしまうと自然体系がいったん壊れ、高速道路を地下に造っても野川自体にはあまり影響がなさそうに思えてしまうのですが・・・、どうなのでしょう。

もっとも、近年の危険すぎる局地的な豪雨を考えると、自然が・・・などとはあまり大きな声で言えないかもしれません。上流で危険氾濫水位に達することもありましたし。

それに万が一川から水が溢れるようなことになり、その水が新しくできた地下トンネルに流れ込んだりしたら、前代未聞のとんでもない惨事になってしまいます。

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2、喜多見大橋と野川の眺め

茶屋道橋から見た喜多見大橋の写真
茶屋道橋から見た喜多見大橋

通行していると分かりませんが青い橋です。

野川は、国分寺崖線の湧水を集めながら崖線に平行して流れている多摩川水系の一級河川です。源泉の一つは国分寺にある環境省選定の名水百選である真姿の池湧水群であることも知られています。

世田谷の少し上流にあたる調布市では、灯ろう流しが行われていたり、桜並木のライトアップが行われているなど、流域の生活に根付いている川ともいえます。

世田谷区内でいうなら、成城の喜多見ふれあい広場、喜多見の次太夫堀公園の横を通り、鎌田で仙川が合流してきて、二子玉川の兵庫島のところで多摩川に合流しています。

どちらかというと、仙川の方が地名にもなっている分、知名度があり、なんとなく大きな川といったイメージを持っている人もいるようですが、仙川は野川の支流となります。

喜多見大橋の橋名板
喜多見大橋の橋名板

歩行者部分はとても狭いです。

喜多見大橋から見た野川上流の眺めの写真
喜多見大橋から上流の眺め

次太夫堀公園の桜がきれいです。

地域風景資産ですが、多摩堤通りが世田谷通りの手前付近で野川を越えます。そこに架けられている橋が喜多見大橋で、その橋から上流を眺めた風景が登録されています。

この付近の野川、最後に訪れたのが工事を行っている最中だったので今はどうなっているのかわかりませんが、工事を行う前でいうなら新井橋ぐらいから喜多見ふれあい広場ぐらいまでの間に関しては、川の様子にあまり違いはない感じでした。

その中であえて喜多見大橋から上流の眺めと限定しているのは・・・、なぜでしょう。

おそらく大きな通りに架けられている橋ということで古く、知名度がある点、ちょうど次太夫堀公園の桜と緑がある点、「野川ガサガサ」を行っている場所だからといった点から、具体的な場所が示されたのではないでしょうか。

野川 川辺の鳥たちの写真
川辺の鳥たち

色んな生き物が暮らしています。

「野川ガサガサ」について紹介すると、「喜多見ポンポコ会議」の活動の中に「野川ガサガサ」というのがあります。

「ガサガサ」というのは、川好き、生物好きな人が使う俗語みたいなものなので、あまり一般的な言葉ではありませんが、簡単に書くなら、川などの茂みなどをガサガサとしながら網を入れて探すことを「ガサガサ」、或いは「ガサガサをする」といいます。

「喜多見ポンポコ会議」では、年に四回、春夏秋冬に1時間ほど「ガサガサ」を行い、簡単な生態調査を行って川に戻しています。

このガサガサでは、多くのメダカが捕獲されるそうです。実際見ていないので、どのような種類のメダカなのかは分かりませんが、現在日本では野性のメダカは絶滅危惧種となっています。

それは日本にメダカが住める環境、きれいな水が緩やかに流れるような環境が少なくなってしまったことでもあります。

でも、野川は崖線からの湧水を集めながら流れているので、水が比較的きれいであり、また稚魚が隠れられるだけの茂みが多いことから、メダカが暮らしやすい環境があるといえます。

ちなみに我が家でもメダカを飼っていますが、メダカは魚の中でも極端に水の表面付近を好む魚です。

飼育、繁殖自体は容易なのですが、稚魚が生まれても同じ水面を泳ぐ親に食べられてしまいます。水槽内では稚魚を隔離してやればどんどん増えるし、ほっておけば親の餌になるだけで増えません。

喜多見大橋の上流の写真
喜多見大橋の上流

ちょうど野鳥の会の人たちが野鳥の写真を撮っていました。

また、野鳥の会などといった鳥を観察する団体なども活動していて、バズーカーのようなカメラを携えながら歩くおじさん、おばさんの集団も見かけることもあります。

カルガモや烏のように、どこにでも当たり前にいるような鳥の写真を撮っていても面白くありません。自然界にいるあまり見かけない鳥がここにいるから、わざわざ写真を撮りに来ているのです。

そういった野川や野川に暮らす生物を愛する団体が協力して野川に生えている外来植物を駆除したりもしているようです。

このように野川にファンが多いのは、きちんとした生態系を持っていることにより、自然味があり、また適度な川幅や水量の川だからではないでしょうか。

そのへんは人工的なせせらぎと明らかに違う部分です。同じように地元にファンが多い烏山の弁天池も同じような感じでしょうか。

喜多見 茶屋道橋の風景の写真
茶屋道橋の風景(2009年)

きれい過ぎず、汚過ぎず。当たり前の風景が好きです。

どうでもいいことかもしれませんが、私個人的には喜多見大橋の一つ下流に架かる茶屋道橋からの眺めが好きでした。

外環道の工事で今ではちょっと風景が変わってしまいましたが、いかにも川沿いというか、飾り気がない素朴な感じがするというか、のどかな雰囲気がするというか、きれい過ぎず、汚過ぎず、バランスの取れたいい風景だったように思います。

喜多見 水道橋と桜の写真
水道橋と桜

青い橋と青空に桜が美しく映えています。

喜多見大橋の下流、2つ目の橋は水道橋です。喜多見浄水場から水を送る水道管が横に設置された橋です。青い橋が印象的で、春には横に咲く桜との様子がいい感じです。

喜多見大橋から上流の眺めも素晴らしいけど、せっかくなのでこの付近の野川や橋、そして少し足を延ばして小田急線の先の野川緑道までも積極的に歩いてみてはどうでしょう。

3、感想など

喜多見大橋の下流部の写真
喜多見大橋の下流部

2009年の写真。この付近は特に緑豊かで、生き物が沢山いそうでした。

都市部における河川の問題は、とても複雑です。景観、自然、治水、衛生、安全性など様々なことを考慮しなければなりません。

近年では、治水対策として次太夫堀公園の先まで河床を1.5m掘り下げられました。上流については調整しながら進めていくとか。

今後がどうなるかよく分からないのでなんともいえませんが、大雨で氾濫することなく、メダカも暮らせるような川、いわゆる生態系のバランスが取れた美しい川であってほしいと思います。

せたがや地域風景資産 #1-25
喜多見大橋から見た野川上流の眺め
2025年2月改訂 - 風の旅人
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・地図・アクセス等

・住所喜多見6、7丁目 (玉堤通りと野川が交差する地点)
・アクセス最寄り駅は小田急線喜多見駅、成城学園前駅。駅から少し離れています。
・関連リンク喜多見ポンポコ会議
・備考ーーー
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