* 野川の河川工事と外環道 *
外環道のインターができる付近の野川
河川工事が行われる前です。奥の東名高速の付近にインターができます。
地域風景資産には喜多見から多くの項目が選ばれています。そのいずれも「喜多見ポンポコ会議」という団体の推薦によるものです。
この「喜多見ポンポコ会議」は東名高速と中央高速、そして関越などといった高速を郊外で環状に結ぶ外環道の建設が決まり、その予定路に含まれる自分たちの町では環境面などでどういった影響を受けるのか、どれほど外環道が必要とされていて、実際に完成したらどのような効果があるのかをきっちり検証してその是非を問いたいといった事がきっかけで2000年4月に発足した団体です。
その過程で自分たちの暮らす町の魅力はなんだろう、守っていきたいもの、残しておきたいものはなんだろうと考え、地域の文化や魅力を地域紙であるポンポコ新聞を発行して紹介したり、野川を守っていく活動を行い、そういった積極的な活動を評価され、風景資産にも多くの項目が登録されています。
野川の改修工事の様子
上と同じ場所。完全に川が新しくなっています。
その外環道は東名高速が野川をまたぐ付近にジャンクションができ、野川の右岸に沿う形で成城方面に地下トンネルが掘られる計画となっています。
土地の買収が困難な時代となってしまったので新しい道路が地上に造りにくいのは分かりますが、地下で高速道路がどんどんと結ばれる時代がくるとは・・・思ってもみませんでした。
昔見た未来の予想図は空中にパイプのような道がたくさん通っているような空中都市ばかりでしたから・・・笑。
実際に地下に高速道路が造られて影響がでると思われるのは崖線の湧き水を含めた付近の地下水への影響と、野川の環境でしょうか。
とはいえ都心部では地下水や湧き水の減少は避けられない問題です。便利さ、安全性、衛生問題と引き換えにした都市化の宿命といったところでしょうか。
野川には様々な影響が・・・と思っていたのですが、現在治水対策のため河川整備が行われていて、高速道路ができる以前にコンクリートでガチガチに囲まれ、一度生態系がリセットされそうな感じです。
野川の改修工事2
次太夫堀公園付近です。
河川工事について調べてみると、昭和31年より1時間30ミリ降雨対応を行う工事が行われ、昭和57年には幾つかの台風で被害が出たことから全流域にわたって1時間50ミリ降雨対応の整備計画を策定し、現在その計画に沿って河川整備が行われている最中のようです。
訪れた時には河床が掘り下げられ、今までの面影が・・・というぐらい徹底的に河川の改修工事が行われていました。ここまで河川が人工的に工事されてしまうと自然体系がいったん壊れ、高速道路を地下に造っても野川自体にはあまり影響がなさそうな感じですね・・・。
もっとも近年の危険すぎる局地的な豪雨を考えると、自然が・・・などとはあまり大きな声で言えないかもしれません。上流で危険氾濫水位に達することもありましたし。
それに万が一川から水が溢れるようなことになり、その水が新しくできた地下トンネルに流れ込んだりしたら前代未聞のとんでもないことになりそうです。
* 喜多見大橋と野川の眺め *
茶屋道橋から見た喜多見大橋
通行していると分かりませんが青い橋です。
野川は国分寺崖線の湧水を集めながら崖線に平行して流れている多摩川水系の一級河川です。
源泉の一つが国分寺にある環境省選定の名水百選である真姿の池湧水群であることも知られています。
世田谷の少し上流にあたる調布市では灯ろう流しが行われていたり、桜並木のライトアップが行われているなど、流域の地域に根付いている川ともいえます。
世田谷区内でいうなら、成城の喜多見ふれあい広場、喜多見の次太夫堀公園の横を通り、鎌田で仙川が合流してきて、二子玉川の兵庫島のところで多摩川に合流しています。
どちらかというと仙川の方が地名にもなっている分、知名度があり、なんとなく大きな川といったイメージを持っている人もいるようですが、仙川は野川の支流となります。
喜多見大橋から上流の眺め
次太夫堀公園の桜がきれいです。
地域風景資産ですが、多摩堤通りが世田谷通りの手前付近で野川を越えます。そこに架けられている橋が喜多見大橋で、その橋から上流を眺めた風景が登録されています。
この付近の野川、最後に訪れたのが工事を行っている最中だったので今はどうなっているのかわかりませんが、工事を行う前でいうなら新井橋ぐらいから喜多見ふれあい広場ぐらいまでの間に関しては、川の様子にあまり違いはない感じでした。
その中であえて喜多見大橋から上流の眺めと限定しているのは・・・、なぜでしょう。
おそらく大きな通りに架けられている橋ということで古く、知名度がある点、ちょうど次太夫堀公園の桜と緑がある点、「野川ガサガサ」を行っている場所だからといった点から具体的な場所が示されたのではないでしょうか。
川辺の鳥たち
色んな生き物が暮らしています。
「野川ガサガサ」がでてきたので紹介すると、「喜多見ポンポコ会議」の活動の中に「野川ガサガサ」というのがあります。
「ガサガサ」というのは、川好き、生物好きな人が使う俗語みたいなものなので、あまり一般的な言葉ではありませんが、簡単に書くなら川などのガサガサした茂みなどをガサガサとしながら網を入れて探すことを「ガサガサ」、或いは「ガサガサをする」といいます。
「喜多見ポンポコ会議」では年に四回、春夏秋冬に1時間ほど「ガサガサ」を行い、簡単な生態調査を行って川に戻しています。
このガサガサでは多くのメダカが捕獲されるそうです。実際見ていないのでどのような種類のメダカなのかは分かりませんが、現在日本では野性のメダカは絶滅危惧種となっています。
それは日本にメダカが住める環境、きれいな水が緩やかに流れるような環境が少なくなってしまったことでもあります。
でも野川は崖線からの湧水を集めながら流れているので水が比較的きれいであり、また稚魚が隠れられるだけの茂みが多いことから、メダカが暮らしやすい環境があるといえます。
ちなみに我が家でもメダカを飼っていますが、メダカは魚の中でも極端に水の表面付近を好む魚です。
飼育、繁殖自体は容易なのですが、稚魚が生まれても同じ水面を泳ぐ親に食べられてしまいます。水槽内では稚魚を隔離してやればどんどん増えるし、ほっておけば親の餌になるだけで増えません。
喜多見大橋の上流
ちょうど野鳥の会の人たちが野鳥の写真を撮っていました。
また、野鳥の会などといった鳥を観察する団体なども活動していて、バズーカーのようなカメラを携えながら歩くおじさん、おばさんの集団も見かけることもあります。
そういった野川や野川に暮らす生物を愛する団体が協力して野川に生えている外来植物を駆除したりもしているようです。
このように野川にファンが多いのはきちんとした生態系を持っていることにより自然味があり、また適度な川幅や水量の川だからではないでしょうか。
そのへんは人工的なせせらぎと明らかに違う部分です。同じように地元にファンが多い烏山の弁天池も同じような感じでしょうか。
茶屋道橋の風景
きれい過ぎず、汚過ぎず。当たり前の風景が好きです。
どうでもいいことかもしれませんが、私個人的には喜多見大橋の一つ下流に架かる茶屋道橋からの眺めが好きでした。
今ではちょっと風景が変わってしまいましたが、いかにも川沿いというか、飾り気がない素朴な感じがするというか、なんかほのぼのした雰囲気がするというか、きれい過ぎず、汚過ぎず、バランスの取れた風景に思います。
水道橋と桜
青い橋と青空に桜が美しく映えています。
喜多見大橋の二つ下流は水道橋です。喜多見浄水場から水を送る水道管が横に設置された橋です。
青い橋が印象的で、春には横に咲く桜との様子がいい感じです。
喜多見大橋から上流の眺めも素晴らしいけど、せっかくなのでこの付近の野川や橋、そして少し足を延ばして小田急線の先の野川緑道までも積極的に歩いてみてはどうでしょう。
* 感想など *
喜多見大橋の下流部
2009年の写真。この付近は特に緑豊かで、生き物が沢山いそうでした。
都市部における河川の問題はとても複雑です。景観、自然、治水、衛生、安全性など様々なことを考慮しなければなりません。
近年では治水対策として次太夫堀公園の先まで河床を1.5m掘り下げられました。上流については調整しながら進めていくとか。
今後がどうなるかよく分からないのでなんともいえませんが、大雨で氾濫することなく、メダカも暮らせるような川、いわゆる生態系のバランスが取れた美しい川であってほしいと思います。
ー 風の旅人 ー